第75話

『組の極秘事項ですか?でも、安心してください。僕は會田組組長ではなく、麟太郎くんのお父さんに質問しているので。』



「餓鬼が。」



男は背凭れに背中を預けると、煙草を取り出して咥えた。

その煙草にユウジの父がジッポで火を付けた。



一度煙を吐き出した男は、椅子から立ち上がり窓の前に立って口を動かした。

男は独り言のように壱の生い立ちを話してくれた。



『なるほど、そういうことだったんですね。でも……それだと……んー。』



「それで?誰から聞いた?」



『ああ、そっか。壱が呟いたのが聞こえただけです。それでは、部外者はお暇致しましょうか。』



踵を返した私に、ハラハラしていたらしい四人の顔が目に入る。

四人の背中を押し、部屋を出ようとした。



「待て小僧。名前を言え。」



麟太郎の父は“組を率いる長”の顔をしていて、生意気な小僧の名前がご所望らしい。



『一問につき、一問の質問ですよね?それに、個人情報を自分から怖い大人に教えるほど阿呆じゃないので。お邪魔しましたー!』



「てめぇら、そいつらに手ぇ出すな。約束通り大人しく帰れ。」


組長が今にも私たちに襲いかかりそうな男たちに静かに言った。

昨日の我が家でのことを思い出し、やはりトップの雰囲気で組の感じは違うのだと実感した。



その後、私が出ていった部屋で男が笑っていたことを私は知らない。

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