第66話

私の後ろに隠れた大吉と諭吉にバリカンを構えたみくじさんが、今にも飛び掛かろうとした時。



「もー、今日は何の騒ぎっすか?」



池ポチャ晃が欠伸をしながらこっちに来た。



「アイツらは体調を崩した若を放って寝転けていた。若の部屋でな。」



「「「「わ、若の部屋っ!?!?」」」」



「若の部屋でナニを!?」



「羨ましい!!」



「みくじさん、天罰を!!」



「殺っちゃってください!」



晃の後ろから次々と組員が現れて、私の背後の二人を睨むと目をギラつかせた。

厳つい男たちの鬼の形相に、私と光くんも顔を引き吊らせながら後退る。



『み、みくじさん?』



ギラッとみくじさんの切れ長の目が光り、私の後ろの大吉に迫るバリカン。

私の耳をすれすれを通ったそれを、手に持っていた武器で受け止めるとバリカンから変な音がした。



「「「……。」」」



耳が痛い沈黙。

蝉の鳴き声に耳を傾けると、むわっとした生ぬるい風が髪を撫でる。



「お前ら何してんだ?みくじ、バリカンなんか持って……紺もなんでフォーク持ってる?」



『……えへっ!』



現実逃避をしていたのに、突然現れた祖父のすっとんきょうな声にその場にいた全員が祖父を見る。



「か、頭……」



「静かにしないと紫織が起きちゃうよ。」



「頭、申し訳ありません。愚息たちが若を」



「俺たちの若に夜這いを!!」



「俺たちの若は今日、お体が優れず病院へ!!」



「俺たちの若が傷物にっっ!!!」



「『はっ!?!?』」



「「ふざけんなっ!!」」



眉間にシワを寄せ、悔しそうに言葉を絞り出すみくじさんの後ろから、やいのやいの男たちがあることないこと勝手な妄想を言い出す。



「な、なんだって!?紺はタフだなぁ!二人とシたのか!?身重か!?さすがみくじの子供は手が早いなぁ……でも!まだ紺ちゃんは嫁にはやらーんっっ!!みくじ、僕にはそのバリカンを渡せ!」



『黙れクソ爺どもめっ!身重じゃねぇわ!!まだ処女だわ!!勝手な妄想してんじゃねぇ!!誰がこんなちんちくりんどもとするかっっ!!!』



「「ちんちくりんだと!?!?」」



みくじさんはバリカンのスイッチを押して電源を向けようとしたが、フォークが刺さったバリカンは壊れてしまっていた。

祖父に向かって新しいフォークを投げると、ひょいっと避けられて後ろの壁に突き刺さった。

二人は祖父の恐ろしい形相に怖じ気付きながら私に反論してくる。



『みくじさんが手ぇ早いのも聞きたくなかったわ!』



「「「若は、処女!!!よしっ!!」」」



『何対するよし!?!?っ!く、来るなぁぁあ!!!』



みくじさんの後ろから男たちは、獣のような荒い息を吐きながら熱のこもった目をぎらつかせて私目掛けて飛び掛かる。

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