第57話
「倒れたらしいけど、意外と病弱なんだな。」
女たちは床やソファーでくつろいでいて、一番窓際の大きなソファーにららが座ってお茶を飲んでいた。
この部屋は壁に落書きもなく綺麗だ。
『気が抜けちゃったみたい。』
「それで?」
『うん、三階も綺麗になってた。僕の“お願い”を聞いてくれてありがとう!またお掃除タイムが来ないことを願ってるよ。それと、昨日は女の子も投げちゃってごめんねー?』
周りを見渡して言うと、彼女たちはキョトンとしていた。
こういう時、ちょっとでも笑顔を作れたらいいのかもしれない。
「向かっていった奴の自己責任。あれでも手加減していたんだろ?簡単に鉄パイプ曲げたり、椅子を壊したり……一発殴っただけで男の腕を折った。八雲がまともに喧嘩したら全員病院送りだっただろう。」
桜に背中を押され、ららの向かいに用意されていた椅子に座らされた。
沙羅がお茶を淹れてくれて、飲めとばかりに押し付けてきた。
それを受け取って一口飲むと、冷たいアイスティーが渇いていた喉を潤す。
『揚羽蝶は髑髏とも鴉とも違うよね。ららちゃんは投げ飛ばされた子達の手当てしてたし、体育館から女の子たちをいち早く避難させてた。』
「私はここを任された。この子達を守るのは私の義務だ。」
ららの意志が籠った澄んだ瞳が私を射抜く。
私の何もかもを見透かそうとしているかのように。
『ららちゃんは』
「ららのことを気安くちゃん付けするな!」
さっきの沙羅のようなことを桜が吠える。
えー、なんて呼べばいいんだよ。
『え、じゃあ菊っちゃん?』
「ふざけんな!」
『菊ちゃん?あ!ららたん!おわっとと……』
顔を真っ赤にして怒る桜が私が座っている椅子を蹴って、持っていたアイスティーが衝撃で揺れて溢れそうになった。
「桜。私のことはららでも菊池でも好きに呼んでいい。」
『あ、じゃあ何気に気に入ったららたんで。』
「それだけは絶対に嫌だ。」
『えー……好きに呼んでいいって言ったのに!?こらっ、沙羅!桜!両方から椅子を蹴るんじゃない!』
私の両端に立ち、私の椅子を手加減なしにゲシゲシと蹴りつける二人に叫ぶ。
「ららのことをららたんなんて……ららたんなんて!あたしたちでも呼んだことないんだぞ!」
「心の中でしか呼んでないんだぞ。」
『お、怒ってるのそこ!?てか心の中で呼んでるんだ!ららたんアイドルなの?推しなの?声に出そうぜっ!いたたっ!』
「ふっ……あははっ!」
私の耳や髪を引っ張り出した二人と私は同時に動きを止めた。
周りの女子からも驚いた声が聞こえる。
私たちは全員で、ただ一人お腹を押さえて声を出して笑っている一人の少女を見ていた。
彼女はひとしきり笑い、目に溜まって雫を指で拭った。
「「『わ、笑った……?』」」
「は……?私も人並みに笑う。何を、鳩が豆鉄砲食らったような顔をしている?この二人はお前を気に入ったみたいだな。面白いからお前には何と呼ばれてもいい。」
『あ、ありが…と?』
「あたしはこんな男なんか!き、気に入ってなんかっ!!大嫌いよ!」
桜は両頬を膨らませて、そっぽを向いてしまった。
沙羅は否定せず、ららの隣に座った。
「お前と話がしてみたくなったんだ。どんな奴なのか気になってた。」
『なんで?』
何か、真意が隠れている気がする。
考えすぎだろうか。
「綾瀬大吉、諭吉と九条錦は誰にも従わず、この学園でも異質だった。その三人は誰ともつるまず、自分達の世界にいた。その中に突然入った謎の男に髑髏も鴉も興味がある。それは揚羽もだ。」
『僕は大して面白味もない普通の平々凡々な16歳。ちょっと怪力なだけのどこにでもいる男の子。これからよろしくね、ららたん。』
「ちょっと!?ゴリラのくせして……誰がお前とよろしくなんか」
『桜もよろぴくー。沙羅もね。』
「ふっ……ああ、よろしく。」
「……よろしく。」
「ちょっと!二人とも!」
揚羽蝶の他のメンバーは15人しかいなくて、改めてここの女子の少なさを感じた。
次は髑髏に行くからと生徒会室を後にした。
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