第55話
私たちはまず保健室があった一階、体育館、体育倉庫、校庭、中庭、裏門、校門前を見ることにした。
スプレーの落書きはそのままだが、ゴミはなくなって水を流したらしく歩くとキュッキュッと音がする。
でも悪臭はだいぶ治まっていた。
裏門も綺麗になっていた。
『部屋の中は窓全開にしておけば明日には臭いもマシになるかなー。』
「紺ーっっ!!」
『あ、銀聖。っむぐ!?』
最後に体育館を見ようと中に入った時、突進してきた銀聖に手加減なしに抱き着かれて固い胸板に鼻が激突した。
「紺大丈夫か?俺、ベッドの中の看病得意だからシてあげようか。」
「おいっ!紺から離れろ!!」
私の友人三人が私に引っ付いた銀聖を離そうとしたが、それよりも先に動いたのは銀聖だった。
『うぎゃぁ!?!?ケツをっ触ってんじゃねぇぇぇっっ!!!』
「っ、ぐはっ!」
「っ!!銀聖!?お前はまた馬鹿だなぁ……。」
体を密着させてきていた銀聖は私の尻を撫で、耳に吐息を吹き掛けてきた。
ぞわぞわと悪寒が背筋を這い上がり、怠い体もこの時ばかりは俊敏に動いてくれた。
膝で奴のブツを容赦などかけず力の限り蹴りあげた。
『男のケツ撫でて楽しいか?これで済んだことに感謝しろ?ほら、ありがとうございます紺様って言ってみ?』
「っは、」
下半身を押さえ踞った銀聖は歯を食い縛った声を出し、潤んだ目で私を睨んだ。
しかし痛すぎて声が出せないらしい。
彫り深めの男前が銀聖の背中を撫でてあげている。
そんな銀聖を置いておいて、体育館を見回った。
銀聖に駆け寄る男たちは銀聖に同情の声をかけている。
私の味方のはずの大吉と諭吉と錦も顔を強ばらせ、銀聖に手を合わせていた。
男だからこそ同情せざる負えないらしい。
『うん、良き良きですね。鴉の皆さんご苦労様~!ありがとねー!また汚くしたらみんな~でお掃除するはめになるからよろしくー。』
「紺……寝てるときは可愛かったのに……。」
回復した銀聖が若干涙目で、私にドン引きの目を向けながら立ち上がってそんなことを宣う。
『いつ僕が寝てるの見たんだよ。』
「保健室で寝顔見ちゃった~。可愛くて、食べちゃいたかったんだけどねー。コブが三つもいて邪魔だったわ。」
『……取り敢えず大吉、諭吉、錦ありがとう。僕の貞節を守ってくれて。銀聖お前は少し慎みを覚えたまえよ。』
「たーちゃぁぁぁん!!慎みってなにさ!?」
彫り深めの男前の肩を掴み、前後に体を揺する銀聖。
見た目とはかけ離れた呼び名に私は身を乗り出した。
『た、たーちゃん!?ジャングル出身!?!?』
「サバンナに行ったこともねぇよ。」
『たぁぁぁぁちゃぁぁぁぁんっっっっ!?!?』
「王者じゃねぇわ。」
私は飛び付いた。
彫り深めの男改めて、たーちゃんに抱き着いた。
「「「紺(ちゃん)っ!!」」」
「えー!?!?俺よりたーちゃんなの!?」
『うわわっ』
たーちゃんに引き剥がされ、その勢いのまま後ろに引っ張られた私を甘い石鹸の匂いが包み込む。
私の前にはたーちゃんを威嚇する大吉と諭吉。
「紺ちゃん、めっ!」
『っ……おー、』
メッ、て奥さん。
可愛いじゃないですか。
耳に息がかかりこそばゆい。
錦の腕の中でモゾモゾと動き、逃げ出そうとしたが錦の細腕はどこからそんな力があるのかと問いたいくらい私を包んで締め上げる。
「紺に触んなユルチン野郎!」
「あ”?そいつが抱き着いてきたんだぞ!?ホモか!?きっしょいぞ。あー、女の子の匂い嗅がないと吐きそ……」
そういいながら唯一いる女子。
揚羽蝶の長髪金髪美女に近寄って───こっちも金潰しされていた。
『……残念すぎる。』
父と類似した肉体とワイルドで雄らしいイケメンにがっかりした。
その顔で女のユルさはやめてほしかった。
「紺ちゃん、アイツは鴉のNo.2で堀江辰憲。硬派な見た目やけど、下半身ユルユルの生粋の女タラシ。近づいたら紺ちゃん孕んでまう。」
『男に子宮はないぞ。』
私にだけ聞こえるくらいの音量で錦が囁く。
その声に気が抜けてツッコミの威力も萎む。
『やっぱ中身って大事だなぁ。』
染々と踞ったたーちゃんを見て思った。
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