第54話

『……薬飲んだことないんだよな。喉つまんないの?』



「睡眠薬とか下剤持ってた人が何言ってる?」



「紺ちゃんなんでそないなもん持っとるん?不眠症?便秘?」



「便秘の人でも下剤は飲まない。いつでもどこでも爆睡できるぞ。」



「自分用じゃなくて襲撃用だ。ゴリラだからな。」



大吉が酷い。

錦が完全に引いてるよ。

諭吉もやれやれ、と困った顔をしている。



「紺ちゃん、貸して?」



『ん?』



錦は私の手から薬と水を取ると、何故かそれを自分のお口の中へ。

そしてゆっくりと私の顔に近づいて───唇に濡れた柔らかい感触がして、次の瞬間には熱い何かが口内を抉じ開けて蠢く。



『っ!?!?んくっ……っん』



大量の水が流れてきて、耐えきれずに飲み込んだ。

私の後頭部を錦の手ががっしりと押さえ込んでいる。

私だけでなく、大吉と諭吉もポカーンと間抜けな顔をしている。



口の端から飲み込みきれなかった水が落ち、シーツにシミを作る。

頭が真っ白で、抵抗も何も出来ずに初めて飲み込んだ薬はいとも簡単に喉の奥へと消えた。



熱く柔らかいそれが、錦の舌だと気づいた時には私の舌を絡め取って軽く吸った錦の舌は引き抜かれて錦はにこりと妖艶に笑った。

舌が熱い。顔も体も熱い。



「「っ!!錦なにしてんの!?!?」」



「びっくりして、薬怖くなかったやろ?」



やっと復活した双子が錦の肩を掴んで揺すり、錦の体をペタペタと触って熱があるんじゃないかと疑っている。

しかし、錦は何でもないかのようにケロッとしていた。



錦の行動を深く考えるのやめよ。

初めてした行為だったが、感情もないそれはただの事故だ。数えるな。気にしない。

錦慣れてるんだ……。

うん、そうだよな。モテそうだから彼女の一人二人三人は当たり前だろう。



……今、心臓がチクッとしたのは風邪を引いたからかな。

脳裏に浮かんだ金色に頭を振った。



『あ、ありがとう?次は一人でも飲めるよ。』



「え!?それだけ!?紺、今のは怒ってもいいやつだぞっ!?」



私の言葉に錦は驚いた何を考えているのか分からない顔をしてから、すぐに笑って頷いて私の頭を撫でた。

諭吉の方が怒っているような顔をしている。



『別に、こんくらい平気平気。それよりも、待たせてるんだから行きますか。』



「「……はーい。」」



不服そうな二人の手を借りて起き上がり、部屋の外に出た。

そこには、ユウジと桃里、舞台の上でららちゃんの隣に立っていた長身のナイスバディな女の子。

そして、舞台の上で銀聖の後ろに座って煙草を吸っていた長身の彫り深めの男前がいた。

程よく鍛え上げた腕の筋肉、厚い胸板、キリッと切れ長の瞳……見た目だけは父に近い。

父の方が数億倍もかっこいいが、ここまで父に類似した肉体の男は初めて見た。

鍛えすぎず鍛えている黄金のボディラインは難しいらしい。母いわく。



「紺くん倒れたんだって?大丈夫?」



『ああ、待たせて悪いな。んじゃ、各リーダーにお礼を言いに行こうか?』

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