第49話

≪諭吉side≫



「『紺っ!!』」



「紺ちゃん顔に出なさすぎや……。」



昨日の今日で朝から辛そうだったが、無表情鉄仮面はさっきまでいつも通り元気に声を上げていたはずなのに、次の瞬間には細い体が崩れ落ちていた。

俺と大吉が動くよりも一歩早く、錦が紺に駆け寄る。

錦の体に凭れて目を閉じている紺は、マスクの中で苦しそうに咳をしている。



『保健室に連れていこう!』



「錦、もらうよ?」



「大丈夫。」



錦は紺を横抱きに持ち上げると、校舎に入っていった。

この学校では教室の唯一の安息の地職員室、南京錠がかかった科学実験室、学校で唯一ベッドがある生徒の聖域保健室は綺麗なままだ。



廊下ですれ違う全員が俺たちに驚きながらも手は出して来ず大人しく様子を伺っている。

たまに紺を抱える錦に脚を引っかけようとして、逆に錦に脛を蹴られて踞った。

大吉も腹が立ったのか踞った男の顔に蹴りを入れる。



いつもならベッドを取り合って争っているのに、今日は掃除をしているから誰もいない。



『冷えピタピタピター』



「紺ちゃん……。」



錦は紺をベッドに寝かし、マスクを外して汗で額にくっついた髪を払う。

大吉はタオルと体温計を持ってきて紺の顔にかいている汗を拭いていた。体温計は脇に。



寝ている紺はいつもよりも幼い顔つきだが、苦しそうに眉間にシワを寄せている。

小さい冷蔵庫から冷えピタを出し、紺の額に貼り付けた。



「紺ちゃん、無理しとったやな。気づいてあげれんかったわ。」



『無表情鉄仮面の顔色を昨日会ったばっかの錦が分からなくて当然だ。四六時中一緒にいる俺たちが気づくべきだった。』



「んっ……」



錦が紺の頬を撫でると、紺はその手にすり寄る。

眉間のシワが少しだけ薄くなった気がする。



もっと早く気づいていれば……紺は倒れなかっただろう。

なんて不甲斐ない。



ピピピッと音がして、大吉が紺の脇から体温計を取り出して顔をしかめた。



「38.5度……紺昨日の夜は微熱で今日は大丈夫っつってたのに、嘘じゃん。はぁ……紺は今日はこのまま寝かせとく。諭吉は紺の側を離れるな。悪いけど、錦と俺と一緒に裏門終わらせよう。俺たちがずっとここにいても紺は良くなんない。」



「分かった!」



「諭吉、俺たちが出たら鍵締めろ。」



大吉の言葉に俺も頷いた。

紺が運ばれているのは廊下にいた大多数の生徒に見られた。

昨日の紺に負けて真っ向勝負は敵わないと分かっていても、意識のない紺に報復をしてきても可笑しくない。



二人が扉に向かって方向転換した時、保健室の扉がガラガラと開いて白いに近い銀髪が顔を出す。



「やっほー!紺がお姫様だっこで保健室に連れ込まれたって聞いたけど?ベッドの上でナニしてんの?」



「なんで伊嶋が?」



「たーちゃんが見かけたって報告くれた。心配で来てあげたんじゃーん?」



たーちゃんは、鴉のNo.2である堀江辰憲ほりえ たつのり

ついこの前10股がバレて他校の女子生徒たちが学校に押し掛けてきて校庭で修羅場っていた。

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