第47話
「おい、八雲紺!」
折れた腕を吊った桃里は、私の前に立ち下から睨み付けてきた。
『桃里、怪我は大丈夫?次からは喧嘩する相手ちゃんと見なよ。』
「っ!ほんとムカつく野郎だな!!……でも、救急車はあり、ありが……とぅ。」
『ツンデレか……君なら需要あるだろうさ。』
真っ赤な顔で怒った桃里もまた、プリプリと怒って麟太郎たちの後を追った。
「桃里、大丈夫かなー。」
「ほんまやな。これから會田くんと反會田くんの仲間たちに板挟みになるやろう。」
『心配なら、アイツが助けてって言った時助けてやりゃいい。それまではアイツの問題。世話焼きとお節介は違う。僕たちも掃除始めよう。』
しかし、私たちが持ってきたものは全く役に立たなそうだ。
それは三人も思ったらしく、一度掃除道具もロッカーにしまった。
何処からか諭吉と錦がホウキとごみ袋と大きなトングを持ってきてくれた。
裏門は初めて来たが、日陰になっていて暑さは凌げる。
だが、ここもやはりごみの山。
ハエも集っていて、酷い有り様だ。
『う”ぅっ……』
私と諭吉がトングでごみを広い、錦と大吉がホウキで掃いていく。
「ちょーちょー、紺ちゃん紺ちゃん。」
『ん?』
肘で私の脇腹を突っつき、背後に立った錦が私の肩に自分の顎をのせる。
うぅっ……耳に息がっ、くすぐったい。
ふわっと柔軟剤の柔らかくてせっけんと少し甘い匂いが混ざった錦の香りが鼻腔を掠める。
「紺ちゃんは、“助けて”って言うたら助けてくれるん?」
『僕は誰彼構わず助けるようなお人好しではない。』
「じゃあ、大吉と諭吉のことは?」
『家族みたいなもんだしな。』
「ほんなら、家族じゃない僕は?」
『は?』
横を向くと、錦も泣きそうな顔で私を見つめていた。
端から見たらキスしているように見えなくもない超近距離。
今ならウサギの耳が見える気がする。
はぁ、と溜め息を吐いて錦の額にデコピンを繰り出してから耳を引っ張った。
『ばーか。なんつー情けねぇ声出してんだボケ。友達だっつっただろ?友達くらい助けられねぇでどうするよ。ま、僕にできる範囲でなら助けてやんよ。』
ぐしゃぐしゃに頭を撫でてから、乱暴に頭を押してやった。
「こ」
『寂しがり屋のうさぎくんよ。シリアス?なにそれ美味しくないじゃん。お前は笑ってろ。』
錦の頭に手を置き、笑った……つもりだ。
笑えているだろうか。口角を吊るかもしれん。
「っ、わら……!?」
錦は目を見開き、手で口元顔半分を覆い隠してしまった。
心なしか耳が赤い。
『耳赤いぞ?大丈夫か?熱中症?』
「え!?う、ううん!元気元気!紺ちゃん、紺ちゃんは……やっぱ何でもない。」
『なんだよ、途中で辞めると気になるじゃーん。』
「……紺ちゃん、はっ……僕に隠してることあるやろ。」
『へ?』
さっきまで挙動不審だった錦が今度は真剣な眼差しで、困ったように笑う。
なんで聞いた本人が困惑した顔してるのさ。
「や、やっぱりなんでもない!気にせんといて!」
『錦。』
もう一度錦の額をデコピンして、両頬をパンッと両手で挟む。
『人には誰しも見せられないものがあるんだよ。例えば錦は、幼馴染みで仲良しの大吉と諭吉に尻の穴を見せられるか!?』
「え?い、嫌や。」
『大便してる姿を晒せるか!?』
「む、無理や……」
『自分のブツシコってるところを見せられるか!?』
「シっ!?ぜっ絶対に嫌や。」
『女とセックスしてる所見られて平気か?』
「セッ!?!?そんなん見られたら死んでまう!見せられるわけないやろ……例えが全部極端でちょっと引くわぁ。」
『コホンッ!!つまり、そういうことだ。どんなに親しくても誰しも見せられないものも見せたくないものもある!隠し事があるからなんだ?それがあるから友達じゃないのか?』
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