第35話

『し、死んじゃうっっ!!』



「なんで~!?」



『埃っぽい!臭い!不潔!!』



「そんなの慣れ慣れ~!夏休み明けの熟成された腐った臭いを嗅げば平気になるよ。」



慣れたくない!!

鼻が馬鹿になってるだけじゃねぇか!



鼻をズルズルさせ続けている私を連れて、やって来たのは1-3と札が掛かっている教室の前。

中に入ると少数人が机や椅子、床に座って何やら熱心に雑誌を眺めて物議を醸している。



「何々?何見てんの?」



大吉と諭吉が男たちの輪の中に入っていき、わいのわいの盛り上がっている。

ユウジと近付いて雑誌を見た。

男たちはユウジをさん付けで呼んで少しビビりながら挨拶した。

そして私のことを怪訝な目で見つめる。



────が、私もその雑誌を怪訝な目で見る。



その雑誌には、水着姿の巨乳美人たちがたくさん載っていた。

それを見る私の目に気付いて、諭吉が私の目を覆い隠す。



「紺は見ちゃダメーっ!!」



「え、なになに?もしかして紺くんウブ?童貞?」



『性行はしたことない。』



「こ、紺!!」



『なんだ諭吉、顔を真っ赤にして……お前もウブか。』



「う、うるさい!」



『恥ずかしいことじゃないぞ、諭吉。』



母がいつか言っていた。

それは愛情を伝える大切な行為だから、本気で好きになった人に捧げなさい。

それまで死ぬ気で守れ、と。

父も気持ちがあるのとないのではそれは全く異なる行為だと言っていた。



『僕は本気で惚れた奴とするって決めてる。』



「同じようなこと母さんが言ってたな……。」



大吉と諭吉が懐かしそうに目を細めた。

何故か雑誌を見ていた少年たちがキラキラと目を輝かせている。



「紺くん紺くん、その話しは置いといてー。タイプはあるでしょ?どの子どの子?」



ペラペラとページをめくり……一人の女の子のページを指差した。



『この子可愛い。』



大きな瞳、血色の良い赤い唇。

白い肌に小さな体に大きいとは言えないが形の良いお胸の美少女さん。

少し私の向こうで出来た親友に近い容姿をしている。

あの子の日本人版みたいな子だ。



「紺くんはこういう子がいいのかー。んー、ららちゃんに似てる感じが好みなんだね。」



『ららちゃん?』



「揚羽蝶のトップ。俺と同じクラスなんだー。」



『へー。ユウジ何年?』



「2年。」



ユウジは指をVサインしながら窓の外を見た。



「俺もう行くねー。重役出勤が来たからさ。」



ユウジが教室を去って、チャイムが鳴ったのと同時にバーコード先生が来て授業らしきものが始まった。

それは誰も聞いていないし、先生も形だけ授業しているだけで全く聞こえないものだった。

学級崩壊、というよりも学校崩壊している。



ユウジが見た窓の外を見ると、乱闘が行われていたはずの校庭は静かになっていた。

少年たちは悠々と校庭のど真ん中を歩く三人の男たちがいた。

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