第33話
そんな二人の傍らにいる私にも突き刺さる視線。
そのほとんどが探るようなものばかりで、いい気持ちはしない。
異物を警戒している。
「大吉くん、諭吉くんおっはよー!隣のイケメン誰?」
「はよ。今日転校してきた紺。」
「紺くん!俺は桜井ユウジ。よろしくー。」
『おー。』
2メートルあるんじゃないか?
ひょろ長い私と同じくらいピアスをつけた大男。
ハーフなのか、ブルーの瞳の中性的な美形くんがにっこりと笑って私を見下ろす。
こいつもまた、探るような目で私を見ている。
「ユウジ、今日はアイツらと一緒じゃないの!?」
「あー、皆お寝坊さん。俺早起きだからー。」
大吉の問いに、私から視線を外してユウジが答える。
諭吉が私の耳に口を寄せ、ボソッと囁く。
「ユウジは我蛇髑髏のNo.2なんだ。普段は滅茶苦茶温厚だけど、キレると手が付けられない。」
「紺、職員室に行こうぜ。」
「どうせ同じクラスだけど、形だけな。」
『分かった。』
「暇だから俺も一緒に行くー。」
そう言って歩き出した私たちの後ろをユウジがついてきた。
「それにしても、そっかー。今日が転校生が来る日だったんだね。いつものあれやらないとだねー。」
『いつものあれって?』
「「あっ!紺に言うの忘れてた!」」
おい、しっかりしろよ。
私の護衛くんたちよ?
「転校生が来たのは今年まだ一回だもんねー。忘れるのは仕方ないよ。」
「紺、新入生と転校生には必ず通過儀礼があるんだ……。」
「拳と拳の腕試し。体育館でうちと鴉の特攻と喧嘩してもらうんだ。もし万が一にも勝てたら入りたいところを選べる。負けても、トップが勝負してどっちに入れるか決める。強くないとうちには入れないけどねー。」
勝手に品定めされて、勝手に買われる。
この学校に入学する生徒は知っていて入っているのだろうから納得しているのだろう。
『大吉と諭吉は何処にも入ってないってことは、勝ったんだな。』
「入学式は乱闘だったんだ。俺たちと錦、中学から髑髏に入ってる桃里って奴だけが生き残った。」
「うちのトップは二人と錦くんのことすっごく欲しがってるんだけどね?三人とも頷いてくれないんだよー。紺ちゃんは腕に自信ある?折れちゃいそうだね。あとで校内放送入るから楽しみだね。」
『なんかルールあるの?』
「チャカ持ち込み使用厳禁。それ以外ならなんでもあり。体育館に武器は用意してあるよー。」
この暑さで制服で、汗かきたくないなー。
こんなことを思ってしまう私は女の子失格かもしれん。
ユウジは面倒見がいいみたいで、学校のことを色々教えてくれた。
体育館は喧嘩会場、屋上は我蛇髑髏、中庭は鴉、使われていない元生徒会室は揚羽蝶の場所。
所々窓が割れていて、壁には至るところに落書き。
床はゴミが散乱しているせいで悪臭もする。
学舎としては劣悪な環境だ。
『クシュンッ』
私、埃ダメなんだよ。
校舎に入ってから鼻水ズルズルしてるよ。
「あははっ!紺くんのくしゃみ可愛い~。」
『あ”?男に可愛い言うな。鼻水つけるぞ。』
「真顔で冗談?うわっ!!ちょ、きたなっ!!あはははっ!面白いなー紺くん。喧嘩強ければうち選んでね。」
ユウジの制服に垂れた鼻水をつけようとすると後退りされた。
ちょびっとだけついたかも。
「ダメダメ!紺は絶対にあげない。」
絶対に嫌だ。
行動制限や集まりがあったりするんだろ?
絶対に無理無理。
自慢じゃないが、集団行動できなくて何度怒られたことか……。
職員室に着くと、ノックもせずに大吉がドアを開けた。
職員室は綺麗だった。
しかし、加齢臭がキツイ。
教師たちはドアが開いたことにビクリと肩を揺らして私たちを見て顔を青くした。
二人に案内されてバーコードヘアーの小太り中年教師の前に行くと、先生は萎縮して大量の汗をかいている。
冷房の効いた部屋で。
「バーコード、転校生は俺たちと同じクラスだろ?」
『ちょいちょい、大吉くんよ。先生を脅すんじゃないよ。ども!八雲紺です。“僕”のクラスはどこですか?』
「ぶふっ」
私の“僕”に笑った諭吉の足をミシッと踏みつけた。
ええ、私は約束通り“僕”でいきますとも。
自他共に認める表情筋全滅無表情の私は今、笑みを浮かべている“つもり”だ。
「え、はっ……はい、3組……です。」
オドオドしている先生は絞り出すような声でそう言った。
大吉と諭吉が愛想の良い笑みを浮かべたから、同じクラスなのだろう。
「行こう、紺。」
『え?先生は一緒に行かないの?ほら、ホームルームで転校生の紹介とかさ。』
「ホームルームなんてこの学校にあるわけないじゃーん!紺くん漫画の読みすぎだよー。」
いえ、私は今まで転校する時は必ずそうでしたよ。
まず第一にホームルームがないだと!?
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