第26話

「紺、投票の結果……“僕”で決まりました!」



『あ”ぁん!?私が投票してねぇぞ!』



さっきのを聞く限り、一票差で“俺”だったのが祖父母の二票で“僕”に軍配を期したらしい。



『勿論、私は“俺”に一票!』



これで同率!

この投票はなかったことにしてやる!



ほくそ笑み私に、大吉と諭吉はにこりと笑みを絶やさない。



「光さんはまだでしたよね。」



「俺は“僕”がいいなぁ。可愛げあるし。」



「父さん、父さんにも投票券はありますよ。」



「俺も“僕”に一票で。」



『私の意思ー!!!』



「多数決の結果、明日から紺は“僕”でお願いしまーす。」



『拒否権を使』



「「えませーん!」」



くだらない!

なんてくだらないやり取りなんだ!



不貞腐れる私に止めの一言を祖父が投げ掛ける。



「紺、往生際が悪いねぇ。それでも黒斗くんとアオの子供かな?」



『あ”っ!?正真正銘あの二人の愛娘じゃボケ!上等だっ!僕っこになってやろうじゃねぇか……あーっ!!』



「皆、聞いてたからな。」



短気はダメ。短気はダメ、絶対。

簡単に挑発でもない言葉に乗せられて了承していた。

女に二言は許されねぇ……母に言われ続けた言葉。



腹の虫が収まらず、立ち上がって風呂に行こうとしたが……



『クソ爺ぃぃ!!』



祖父に向かって牛刀を投げた。

それは祖父の頭の上を越え、壁に刺さった。

その場にいた全員が唾を飲み込んだ。

祖父は私の攻撃を見切っていて、どこから出したのか分からないヘルメットをしていた。



「紺、銃刀法違反だー!黒斗くんに言ってやろー!」



『てめぇはチャカ持っててそれ言うか!?』



「そういえば、今日包丁が一本なくなってたわ。」



子供が「先生にチクってやるー」と言うときのようなテンションの祖父と祖母の呑気な声。

刺さった牛刀をみくじさんが回収してしまった。



『あ……学校に持っていこうと……』



「若、それはいけません。傷害事件を起こすおつもりですか。」



『私、ダーツ得意だから当てないよ。爺も無傷じゃん。人様の命を脅かすつもりはございません。命は重いのです。』



「行動と言動が合ってません。没収します。哲司、光。今すぐ若を拘束しなさい。」



「「御意。」」



抵抗する私を押さえつけ、みくじさんに頼まれて祖母が私の身体検査をする。

そして出てくる出てくる……フォーク、ナイフ、スプーン、メリケンサック、ペンチ、ドライバー、バール、ハンマー、彫刻刀、果物ナイフ、特殊警棒、スタンガンたち。



「「「「……。」」」」



畳に重い音を立てて投げ捨てられる私のコレクションたち。

そしてポケットから錠剤が出て来て……全員が顔をしかめた。

みくじさんがそれを拾い、マジマジと見つめる。



「睡眠薬と下剤……若は何に備えてらっしゃるんですか。」



「その細い体の何処に……てかなんでこんな重装備!?」



『……そのクソ爺の前では気を抜きたくなくて……返せー!!!』



「没収します。」

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