第25話

拝啓、親愛なる父と母。

そして向こうでの友人方。

あなたたちの紺はここ数日、毎日のように求婚されています。



「若、おはようございます!今日も麗しい……結婚してください!」



「おやすみなさい、若。また夢の中で会いましょう。愛してます!」



『うげぇぇぇっ!!!夢の中とかきっしょいこと真顔で言ってんじゃねぇぞ!!』



「ああ……イイ」



『っ!』



ゾワゾワと悪寒が走り、腕の鳥肌を擦りながら私を守るように立つ大吉と諭吉の後ろに隠れ吐き気を抑えた。



自慢じゃないが、私はこの16年間恋愛のれの字もない。

その原因は私の父にある。

敬愛し憧れる父のような男性が理想のタイプの私の周りには、それらしき人間は現れなかった。

顔も性格も父のような男前がいい!

そして何より私より強い男がいい!



『池ポチャの時点でアウトだわ……。』



それもこれも、私がこの家に来た翌日の夕御飯でクソ爺が落とした爆弾のせいだ。



「紺と約束したけど、僕も政略結婚は反対派だからさ。紺ちゃん高校でイイ男探してきてね。勿論組の中でも構わないよ。紺が好きになった人なら僕は反対しないつもり。」



この発言のせいで池ポチャは燃えた。

そしてそれは何故か池ポチャだけではなかった。



祖父の側近のチャラい方、名を高橋光。23歳。

とにかく軽いこの男も祖父の発言の後に「俺も立候補したーいでーす」と手を上げたのだ。

そして強制的に「光くん」って呼んで、とお願いし倒されて呼ばされている。

ただの嫌がらせだ。

多忙な祖父と共に多忙なはずなのに、この男も屋敷に帰って来た日は私にお菓子やら何かしらを貢ぐ。



「紺、光さんは体だけの女を全員切ったらしい。」



「光さんはガチだ。若手有望株で顔良し、腕っぷしも若手随一!頭のキレも良くて世話好き。料理も裁縫もできて兄貴肌。聞いた話では夜のテクも最高らしい。」



『いらねぇ情報ぶちこむなや。』



「晃さんも強いし、光さんほどじゃないけど顔も良い。手先は不器用だけど、機械関連は光さんより詳しいぞ。子供に好かれやすい。聞いた話ではモノがイイらしい。」



『だからいらねーよその情報。特に最後のやつ!』



大吉と諭吉はすっかり楽しんでいる。

二人は本当に私とずっと一緒にいる。

制服の採寸や、変装した二人と賭け金で食べ歩きやら食べ放題に赴いて楽しい時間を過ごした。

祖母と料理を作ったり、庭の手入れの手伝いをした。



そして明日から、私は問題児だらけの不良校に行く。

それも男として。



「紺、君は君らしくしていればいいよ。」



「そうよ、好きなだけ暴れてきてね!華のDKライフ楽しんで!」



『あぁ……華のJKライフよ……さらば。』



手を合わして自分の今までの人生を振り替える。

大袈裟なのは分かっていますとも。



「紺、僕にするか俺にするか決めた?」



『今感傷に浸ってんだっ!邪魔すんじゃねぇ!』



「紺、皆に投票しておいたよ。これが集計。」



『一人称は投票するほど重要じゃない!』



「白熱したのに……。」



諭吉が持つ一枚の紙に、周りにいる男たちの瞳に熱が籠っていた。

馬鹿なのか阿呆なのか暇なのか!?

そんなことに白熱している暇あれば働きやがれ。



「どれどれー?一票差で“俺”かー。」



諭吉から集計用紙を引ったくった祖父は、顎を撫でて神妙な顔つきでそれを見る。

祖母も横からその用紙を見て声を上げた。



「えー!?私まだ投票してなーい!私は“僕”がいいなぁ。勲と一緒がいい!」



「じゃあ僕も投票しようかなー。んー……ほれ!」



祖父が手を出すと、その手にみくじさんがボールペンをおいた。

そのペンで祖父は紙に何かを書くと諭吉に渡した。

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