第12話

あの爺が迎えをやろうか、と言ったのを断ったこと数日前の自分を殴ってやりたい。

その前に、こんなに大変だって知っていたら素直に頷いていた。



『くそ……あっちぃ』



長い長い階段を登りきり、純和風の砂利道を進み、やっと見えてきた大きな門。

汗が顎から落ち、渇いた石の上に染みを作る。



門まで辿り着いたはいいが、インターンホンもない。

大きな観音開きの門。

その横の小さな扉を試しに引いてもビクともしなくて……スライドして開けた。



『……おおっ』



そこには石畳の道、横を向けばドデカイ庭園。

そして、石畳の道の奥にこれまた和風の面構えのお屋敷。

豪邸ってやつだ。



「───っ!!」



「───、───!!」



庭園から数人の話し声。

ここまで誰も会わなかったから、人がいないのかと思っていたがそうではないみたいで少し安心した。



さすがに庭園に勝手に入るのはまずいよなー。

豪邸に近づくと、やっとインターンホンを発見した。



少しドキドキしながら押そうとした瞬間────




「あ?アンタ、誰?」



「なんだ?」



「おいおい誰かいるの……お、女の子だっ!!!」



「「「なにっ!?女の子!?!?」」」



おおおっ!なんだなんだ!?

何処からともなくドタドタと厳つい大男たちがすっとんできた。

そして私を囲んで上から押しくらまんじゅうで見下ろしてくる。

私も170cmと女にしては長身のはずだが、それよりもでかい。

圧迫感!そして暑い!



『日陰ができた……てかムサ苦しい。』



「む、ムサ苦しい!?」



「日陰……」



「なんだこの女!!」



あ、やっべ。

口が滑った。

第一印象は大事だと父と母の言葉を思い出す。



『どうも、こんにちは。私は』



「誰の女だ!?」



「名乗れや!」



「ここが何処か分かってんのか!?あ”??」



一斉に10人近い男たちが喋りだして、その五月蝿さに耳を塞ぐ。

自己紹介しようとして遮られた。



『……うるっせぇな。』



心の声が漏れたらしく、顔をしかめ男たちの中の一人が私の肩を掴む。




「いい度胸じゃねぇか。」



「死ねやっ!!!」



肩に乗った手を払おうとして、囲んでいる奴らが一斉に後ろを振り向く。

庭園の方から怒号が聞こえてきて、全員がそちらを向いた。

私も声のした方を見ると、私と同じくらい歳の真っ赤な髪の少年がこちらも同い年くらいの眼鏡をかけた茶髪の少年に胸ぐらを掴まれて頬を殴られる。

赤髪の少年は鳩尾に重い蹴りを入れた。

肉と肉が抉れぶつかる音に、私は夢中で見入った。



……動きが単調だなー。



「今日はどっちが勝つかなー。」



「俺は諭吉に1万!」



「俺は大吉に1万とビール一本!」



私を囲んでいた男たちが賭けを始め、わいのわいの騒ぎ始めた。

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