第43話
相手の目的が分からない。
私の監視をしているだけで、何かしてくることはない。
錦と獅子さんにも相談した結果、伊嶋の人間であることは分かった。
銀聖に文句を言ったら、「ちょっと待ってて」と言われたっきり音沙汰がない。
病院を出て、私と錦はバイトで諭吉は道場。
今日は確か桃里と被ってたはず。
大吉のお見舞いの時以来だな。
「あっ!!八雲っ!!」
『はよー。』
「あ、あのさ!八雲に聞きたいことあるって言ったじゃん。あれのこと……。」
『ああ、そういえばそんな話しあったな。』
長距離の時言っていた、私に聞きたいことがあるってやつだよね。
色々あったせいですっかり忘れていた。
着替えをしながら横目で桃里を見ると、桃里は一度深呼吸してゆっくりと口を動かす。
「俺見ちゃったんだよ。」
『な、なにを……?』
何の出だし?怖い話を彷彿とさせるそれ。
「高橋光さん……俺の探してる恩人の車に八雲が乗っていくところ。光さんの居場所知ってるの?」
『……。』
ああ、もしかしてダルの時だろうか。
光くんの車に乗ったのはおでかけの時二回とあの日のバイトの時だけ。
桃里の様子が可笑しくなったのはあの後からだから、多分バイトの時だろう。
「あの人に口止めされてる?」
『……ごめん。口止めはされてない、けど。』
光くんは隠したがっている。
目立つことを避け、常に目を光らせて辺りを警戒している光くん。
きっとそれは、過去に桃里を自分の事情に巻き込んで傷付けた負い目。
そして、桃里が自分を追ってこないことを望んでいる。
でもさ、桃里が追いかけるように光くんも逃げているのはお互い縛られてる証拠。
部屋に飾られた桃里との写真。
黒いバイクに跨がった光くんと桃里は、楽しそうに笑っていた。
「俺は……あの人にお礼もなにもまだっ!」
『僕に言われても』
「っっ……。」
桃里は苦しそうに顔を歪め、今にも泣いてしまいそうな表情で唇を噛む。
そして駆け足に着替えを終えると先に出ていった。
「なんだ?アイツ。」
『お疲れ様色さん。おはようございます。』
「ああ。はよ。」
『お節介とか、嫌いなんですけどねー。』
「……あ?何の話だ。」
『こっちの話です。』
携帯を耳に当て、一言二言一方的に話して電話を切った。
「てめーも世話焼きか?そういうところは母親に似たな。」
『そんなんじゃないっすよ。奢ってもらったんで、これはそのお返しです。』
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