第44話

光くんって年上だけどどこか放っとけないんだよね。

変なところ頑固だからかな。



「働け。」



『はーい。』



色さんはパイプ椅子に腰掛けて煙草に火をつけた。

仕込みの準備をしながらコーヒーを入れて更衣室にいる色さんの前に置く。



『コーヒーどうぞ。』



「ああ、ありがとう。」



仕込みの続きをして営業の時間になった。

桃里は落ち込んだようだったが店内の掃除と準備だけは着々と進めていた。



「オーダー入りました。デミグラオム2とカルボ1。新規二名入ります。」



『はーい。』



のそのそと色さんも帰ってきて、色さんの奥さんの緑さんも出勤してきて忙しくなった。



「いらっしゃ……え、な……んで……?」



ああ、来たんだ。



「久しぶり、一人なんだけど大丈夫?」



「は、はいっ!」



桃里は戸惑いながらも光くんをカウンターに案内した。

桃里の嬉しそうな声が聞こえてくる。



「今日は桃里に用があって来たんだ。終わるまで待ってる。」



「うん。」



カレカノかっ!とツッコミたくてグッと言葉を飲み込んだ。



「八雲……」



『なに。』



「光さん呼んだのって」



『僕お節介嫌いって言ったじゃん。偶然じゃない?』



「そっか!」



今まで見たことないような桃里の嬉しそうな笑顔にチクリと胸が痛くなった。

光くんがしようとしている話を、私は想像できてしまうから。



『……。』



「世話焼き。」



『なんすか。』



「面白い顔してるな。」



『僕に表情がありますか?ついに……っ!』



「いいやピクリとも。御臨終。」



『なっ!』



期待だけさせて落とすのが得意だな色さんは。



「紺くーん!カウンターのお客さんが呼んでるわ。」



『はーい。』



緑さんに呼ばれて、光くんだと思っていた私は間抜けな顔をした。



……誰。



『いらっしゃいませ。どう致しましたか?』



眼鏡とスーツが似合う30代くらいのサラリーマンだった。



「とても美味しい料理でした。ご馳走さまです。」



『ありがとうございます。』



「自己紹介が遅れました。私、伊嶋グループの田口と申します。」



伊嶋!?

田口はご丁寧に学生の私に名刺を渡すと、眼鏡のフレームをクイッと持ち上げた。



『ご、ご丁寧に……八雲です。あの』



「ああ、戸惑わせてしまい申し訳ない。銀聖様がお世話になっていると聞いて気になっていたのです。体育祭の噂もまた……興味をそそられるものでしたのでこうしてお会いしたく参りました。」



『はあ、成る程。』



「実はもう一つ用件がありまして、貴方にお茶を振る舞いたいと招待状を預かって参りました。お時間よろしければ是非。」

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