第35話
銀聖の腕を掴んで引き剥がそうとした瞬間、フッと重みがなくなる。
「銀聖くん、紺ちゃんが嫌がってるやん。」
「お邪魔虫が来た来たー。ほんっとムカつくくらいタイミング悪いよなー。」
重みがなくなった変わりに細い体に包まれる。
握ったら折れそうな腕が背中に回り、銀聖と睨み合う。
「紺ちゃん、簡単に許しちゃあかんで。」
『う、うっす……』
「紺、“また”二人きりの時にね。」
銀聖がいなくなると、錦が小さく息を吐いた。
それが私に対してなのか銀聖に対してなのか、それとも両者ともなのか。
『も、もう離して……僕汗くさいし』
「紺ちゃんはいつもええ匂いすんで。あ、でも僕も汗かいてるんや。ごめんな。」
『い、いいえ……』
冷や汗が……背中の汗やばかった!!
心臓がびっくりしてる。
「お二人さーん?」
「あ、諭吉くんごめん。僕トイレ行きたかったんやった。ほな。」
「『……。』」
空気全部持ってって去ってったぞアイツ。
私と諭吉は無言のまま大吉の元へ戻った。
何とも言えぬ表情の私たちに大吉が怪訝な目をしたのだった。
この後、学年リレー、三年と二年の騎馬戦などを終えて遂に最後の棒取りになった。
その間何もなく順調に競技は進んでいた。
棒取りは赤組(1、2組)対白組(3、4組)の対決になる。
両陣地の間にある5本の棒を取り合う。
陣地に棒を運んでも相手の陣地から棒を取りに行っていいルール。
勿論格闘することになるわけで、騎馬戦よりも人数が多いから一番危ない競技だ。
しかも女子も参加する。
さすがは百合学の女子たちだ。
「あっちは伊嶋、堀江、壱、沙羅。こっちは麟太郎、桃里、菊地、俺。パワー的には大差ないけど、こっちには紺くんたちがいるからどうなるかな。」
「麟くん、頑張ろうね!壱のこと倒そう!」
「ああ。」
『ちょいちょい、趣旨変わってる!それは日常でしなさい。棒だよ棒!!』
「あ、そっか。」
うっかりさんなのかな。可愛いから許す。
「覚悟しろよ、會田!八雲!」
「たーちゃん混乱に乗じて紺に手ぇ出すなよー?」
「銀聖……ナイスアイディアだ。」
『やめろ。ジャングルに送り返すぞゴリラ。』
「あ”ぁん!?」
作戦会議の時間なのに結局あちこちで喧嘩になっておにぎりさんからの制裁があった。
前に錦が言っていた通り、喧嘩両成敗だった。
恐ろしくて大人しくなりましたとも。
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