第29話
「リーダー!りんごあるよ!」
「リーダー!トマトあるよ!」
「リーダー!バナナあるよ!」
あ、拡声器越しに言ってたらしい。
案の定クラスメートたちが私に向かってフルーツや野菜を振っている異様な光景が生まれた。
「「「飼育されてる……」」」
背後から色んな奴の声が聞こえたが気にしない気にしない、と思っていたが観客席から絶対零度の寒気を感じて身震いした。
観客席を見ると、みくじさんから放たれる黒いオーラに晃と日和が青い顔をしていた。
「次の競技は長距離ー。」
ららたん天使。助かったー!!
私と錦は長距離に出るから双子と交代だ。
まずは女子からスタート。女子は八周で男子は十周。
「紺ちゃん、僕が勝ったら聞きたいことあんねん。」
『なんだよ。今聞かれても答えるけど?』
「いや、これはなんやろ……心の準備的なやつや。」
『よく分かんないけど、なんでもいいや。どうせ僕が勝つし。』
「僕持久力には自信あるんやで。」
『持久力だけか?』
「え?」
「あ、いたいた!八雲!聞きたいことあんだけど」
『お前もか!』
桃里がユウジと壱と共を引き連れて重い面持ちで駆け寄ってきた。
しかし、桃里を押し退けてたーちゃんが私の肩を掴む。
「八雲、お前負けたら合コンセッティングしろ。」
『は!?なんで!?ナンパでもしてろよ。』
「お前レベル高い女の友達多いだろ。あの文化祭の時の金髪美少女!それに写真の黒髪美人!あの子紹介しろ。」
『金髪は諭吉とイイ感じなんで嫌。』
「ちげーよ。黒髪の方!」
たーちゃん、それは僕のことだよね?
たーちゃんが見たあの写真は私とリサのもの。
「はーい!競技始めまーす!一年位置についてーよーい……」
『桃里、話は後な!たーちゃんの話は聞きませーん。それじゃ錦、健闘を祈る。』
騒がしい毎日だ。
次から次へとややこしい。
こういう時は走るに限る。
軽い準備運動をして、パァンッ!!とスターターピストルの音が響いた瞬間駆け出した。
持久力が試されるこの競技、ペース配分が命だが、それは私には関係ない話。
「「「ば、化け物……」」」
余裕で一等賞。
全速力で十周。スピードを落とすことも息が乱れることもなく終えた。
途中脚を引っ掛けられそうになったが、ジャンプしてかわしたから問題ない。
まだまだ皆は走っていて、半分残っているのをニヤニヤと観戦していた。
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