第28話
こんな学校でも来賓とやらは来るらしく、おにぎりさんは対応しなければならない。
私は所定の位置につき、拡声器の前で大きく深呼吸した。
『位置についてーよーい……ドンッ!』
ドンッ、のタイミングでスターターピストルを鳴らす。
短距離は大吉と諭吉が双子対決をする。
だから、私はスタート位置。錦は教師と共にゴールテープを持っている。
やはり体を動かすのは好きなようで、楽しそうに競技をしている。
『はい次~』
「紺、気持ちが籠ってない!」
「流れ作業じゃ気分上がんねぇよ!!」
『えーでは、ゴホンッ……1レーン彼女とラブラブ大吉選手~、2レーン彼女の八重歯らぶ武蔵選手~、3レーン遠距離片思い中むっつり諭吉選っあぶね!!』
「「「集中できない!!!」」」
文句しか言わないじゃん。
私の頑張り。相撲を意識したんだけどなぁ……。
そんな三人の顔は真っ赤で、皆にからかわれていた。
『あっ!おいそこーナンパするな壱!!女の子引いてんぞ!やめたれやめたれ!他校の女子はお前の弟見に来てんだ。』
「なんだとっ!!八雲てめぇこっち来いや!!」
私は壱に哀れみの目を向け、競技に戻った。
この拡声器中々使えるぞ。
ユウジや桃里に笑われている壱は顔を真っ赤にしてこっちに来ようとしていた。
それを止めているのは……あれはユウジの父ちゃんか。
會田はユウジの父ちゃんが来ているのか。あんま目立たないようにしよ。
『位置についてーよーい……ドンッ!』
先は長いなぁ……。
双子はほぼ同時ゴールだったが、半歩だけ諭吉がゴールラインを越えていたらしい。
諭吉は瞬発力は高いが持久力が弱く、逆に大吉は瞬発力は低いが持久力が強い。
『はい次~』
こうして順々に進んでいき、一番盛り上がったのは二年生リーダー対決。
会場の緊張感が半端なかったっす。
「こーん!!慰めて~!!」
『お疲れ様~ナイスファイト。はい次~』
「酷い流れ作業!!これが倦怠期ってやつ!?」
『せんせー、銀聖が熱射病でーす。そんじゃ位置についてー』
双子の理不尽にも負けず、壱にも銀聖にも負けず、麟太郎の褒めてアピールも無視して……私は粛々と頑張りました。
『腹減ったなぁ……』
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