第27話

観客席の方から銀聖とたーちゃんが来て、晃に声をかけた。

やはりみくじさんを見て柳組組長の側近の顔は有名だと知る。



「伊嶋の若頭、こんにちは。息子たちと仲良くしてくれているようで。」



「こんにちは。柳組の綾瀬さんですよね。晃さんあなた、柳の人間になったんすね。」



「ああ。」



おお、なんか銀聖が礼儀正しいの珍しい。

もう少し見たかったが、おにぎりさんに呼ばれているらしくて行かなくてはならない。



『晃って元百合生だったとは。』



「鴉のリーダーやってたんだって。光さんとは高校からの腐れ縁らしいよ。」



光くんは髑髏のリーダーだったから、対立グループのトップ同士が一緒の組に入ったのか。



『へー。』



「紺はーやーくーっ!」



『へーへー。ダルなにしてるかなー。』



「ダルはずっとだらだらしてるからいいよ。あーるーけー!!」



双子に背中を押され、おにぎりさんの元へ。

そしてそのまま開会式。



「体育祭始まるぞー。まずは校長の話……は、長いから省略。」



桜さん、なんて適当な進行。

校長の話は長いのに聞こえないからナイスだ。

元より生徒たちは話など聞いていない。

便所座りしてうちわ片手にメンチを切っている。



「選手宣誓~。赤組代表八雲紺と白組代表堀江辰憲、前へ。」



桜の一言でおにぎりさんが登壇して、私とたーちゃんはその前に並んで二人で右手を上げた。



「えーと、スポーツマンシップに乗っ取り~正々堂々戦うことを誓いまーす。」



『悪いことした奴は容赦なく絞めることを誓いまーす。反則、ダメ絶対!』



「……健闘を祈る。」



おにぎりさん、その間はなんですか?

たーちゃんどっか変だったかな?わりと真面目にやってるように見えたけど。

そう思ってたーちゃんを見ると、私と目が合った瞬間吹き出した。



どうしたんだ?

首を傾げながら、元の位置へと戻った私たち。



『たーちゃんが気だるげに伸ばしてたからか!』



「紺……紺のあれは選手宣誓じゃない。」



『は!?何言ってんだ。母に教えてもらって完璧だ。』



「紺の母さん、どこの高校出身?」



『たしか、蓮城はすしろ商業高校。』



「どんな学校か知ってる?有名な暴走族とレディースが絞めてる超エリート不良校だよ。エリートって、悪い意味のエリートね。」



『へー知らんかった。』



「でも紺ちゃんのおかげで下手なことする奴減ったやろ。結果オーライや。」



周りを見渡すと、こっちを見ていた生徒たちは私と目があった瞬間顔を背けた。

そんな中、クラスメートたちだけはヘラヘラしていた。



「リーダーは物騒で乱暴で狂暴で無表情鉄仮面だけど、結構ひょうきんな奴だって皆知ってるぜ!」



『物騒?乱暴?狂暴?なにそれ誰のこと?僕に当てはまるのは無表情だけだね。まだまだ皆僕のことを理解してないよ……はあ。』



やれやれ、と肩を竦めると可哀想なものを見るような哀れみの瞳に囲まれた。解せぬ。



「競技を始める。短距離からー。」



私たちの次の仕事は審判だ。

この学校の生徒たちは自分のグループを優先してしまうだろう、と相手グループが審判だと自分が不利だと考えているらしい。

そして教師たちだと、もしも審判ジャッジをする時に脅されるとのことで中立の私たちの出番。

教師たちと共に四人のうち最低二人は審判をする。



幸い、審判の位置からだと観客席がよく見えるから喧嘩が起こったらすぐ駆けつけられる。



しかし、審判をやるということは私たち四人は同じ競技には出られないということ。

では一年生の学年リレーと全校生徒参加の棒取りはどうする?となる。



「その二つは俺がやる。」



おにぎりさんがそう言ってくれた。

やってくれるのなら、他の競技もやってくれと思うがその言葉は飲み込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る