第62話

昔…私の近くにもそんな人がいた。



孤独だけど…人一倍優しい人が。





私は君を幸せには出来なかったけれど、今は彼は幸せだろうか?



そんな事を思うと一週間も前の事なのに、風間君を殴ってしまった右拳が急に疼いた。



咄嗟に私は右拳を反対の手で抑えた。



そう…その彼は風間君に似ていたんだ。



だから、きっと彼を思い出すと風間君を思い出す。



私は無意識にまた右拳を見つめた。





「痛いのかい?」



「え?」



「右手、ずっと見つめてるから。」



ああ、そんなに見つめていたのか。



自分では無意識だから、分からなかった。



「いえ…痛いんじゃなくて、疼くだけです。」



前の傷が、私の心を支配して行く。





人を殴ってしまった自分への恐れが────

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