第76話
『そっか!天樹がいるなら百人力じゃん。私より弱いけどね。』
「一言余計なんだよ。阿呆。」
【神王】でも【天王】でもない、この街の人間じゃない天樹なら帝や杏璃、透に迷惑は掛からないだろう。
二人も花火大会行っているのなら、私が家にいなくてもバレないよね。
『花火見れるんだ!やった!』
「っ……だから、それ言ってきた奴とはどんな関係なわけ?」
天樹の手を握って喜ぶと、天樹はそっぽを向いてボソボソとさっきと同じ事を聞いてきた。
そんなにそこ気になるかな?
そういえば、杏璃たちにも水着を貰う相手との関係を聞かれたな。
『弟だよ。』
「弟?」
天樹は目を見開き、その端正な顔は信じられないと物語っている。
あれ?天樹にも話してなかったっけ?
『うん。あれ、私が三つ子だってこと言ってない?』
「ああ、でも組織ではいくら仲間でも家庭事情まで詮索しないのが暗黙の了解だから……まじか。紫苑みたいなのがあと二人いるってことか?」
『性格はあんまり似てないと思うよ。』
組織内では自分の生い立ちや故郷、家族の話は皆避ける。
自分が話したくないことを、相手に聞く者もいない。
だから、基本的にはずっと一緒に仕事に取り組んでいる相棒でさえも知らないのは自然なことだ。
一人だけ、話したことがある人はいたけど。
「ふーん。」
聞いてきたわりに、反応は薄いんだよな。
取り敢えず人混みは得意じゃないから、適当に買い込んで人のまばらな神社の境内の日陰に避難した。
食事をしながら、学校や臨海学校であったことを話した。
天樹は聞き上手だから、いつもより饒舌に口が動く。
きっと、会いに来てくれたことが嬉しい気持ちもそれを叙情させている。
『そっちはどうしてる?』
「んー、いつも通りじゃねぇか?仕事仕事仕事。今はレオとバディやってっけど、やっぱレオはすげぇよ。」
『レオン様様だから。』
「紫苑と組んでる時より俺のやることが減ってる。」
『おぉいっ!!喧嘩売ってんの!?戻っても天樹と相棒解消してやるからな。』
「……退屈なんだよ。」
天樹はツンデレだから、少し頬を染めて照れた横顔を盗み見て笑いが込み上げてきた。
まだこちらにいる時間の方が短いのに、ほんのちょっと懐かしく感じる。
『ちょっと、寂しかったから天樹が来てくれて嬉しかったよ。』
「お、おう。」
『ありがとね。』
「ばーか。お前が素直になるとか、鳥肌立つんだよ。」
身震いする素振りをして焼きそばを啜る天樹の顔は、心なしか嬉しそうな安心したような清々しい顔をしていた。
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