第75話

【楽園】のメンバーは顔も名前すらも知られていない。

しかし、神に遣える臣下たちだけは共通して一つの印がある。

体の何処かに赤黒い彼岸花を抱えた女神が銃を持ち、その背後に斧を振りかざした死神が女神が罪に囚われるのを待ちわびているタトゥーがあること。

生涯、神に遣えるという烙印。



引き締まった肉体にしなやかな筋肉。

その腰に男はタトゥーを持っていた。

長い足が組まれ、大きな手が煙草を弄んで口元は妖艶な笑みを浮かべる。

嫌がることを分かっていて煙草の煙をわざと吹き掛けてくる趣味の悪い酷い男。

人が嫌がるのを見て悦んでいるのだ。

睨み付けると、鼻で嗤った男は温かい手で私の頭を力加減も分からずぐちゃぐちゃにする。



手で振り払おうとして、男の手は蜃気楼のように消えて私を一人暗闇の中へと置き去りにするのだ────……。



『……んっ、ん?』



暗い寝室の開いた扉から、光が漏れ入っている。

電気つけてなかったはずなのに、もしかしたら帝が杏璃が心配して入ってきたのかな。

管理人に言えば、鍵くらい調達できる。



『だれ?』



リビングに向かうとソファーに寝転がり本を読んでいた人物が体を起こして、ニヒルな笑みを浮かべて振り返った。



「よお、よく寝れたか?」



『っ……天樹!?な、なんでここに!?』



「わざわざ会いに来てやったのに、第一声がそれか?」



天樹が座るソファーに駆け寄ると、立ち上がり私の体を優しく引き寄せて大きな腕の中へと導いた。



『どうして?寂しくなった?』



「ばーか。お前が寂しがってるだろうから、来てやったんだ。感謝しろ。」



『天樹寂しかったんだね。よしよーし』



「可愛くねぇーな。明日には帰っから、今日は俺を案内しろよ。」



『お!じゃあ、屋台に行こう!すぐ準備するから待ってて!』



天樹をソファーに座らせて、着替えやら女の子の色々を済ませてやっと出掛けるとなった頃にはお昼を少し過ぎていた。



「こんなに屋台並んでんの初めて見た。すげぇーな。」



『人もすげぇ。』



大きい花火大会なだけある。

お店の数も人の数も想像以上な賑わいを見せていた。



「なんでこんなに屋台出てんの?」



『今日の夜は大きな花火大会なんだよ。見たかったなぁ打ち上げ花火。』



まだ明るく雲もない青い空が、数時間後には日も沈み夜空に大きく色とりどりの大輪が打ち上げられるのだ。

一度でいい。見たかったな。



「見りゃいいじゃねぇか。」



『んー、夜はあんま出歩くなって。特に今日は女一人は危ないって心配されちゃって。』



「女一人……?その腕っぷしで、か?まあ、おまえにちょっかい出した場合、相手の方が可哀想ってもんだ。それに、俺がいるじゃねぇか。それに、お前の心配するなんて随分お優しい奴がいるもんだな?どんな関係?」

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