第72話
『そっか。透誘うからいいよ。』
「【天王】の頭といるのも……その日出来れば外に出ないでほしいな……と思ってる。」
杏璃は私の顔色を窺うように上目遣いをして私の返事を待つ。
私の心配をしてくれてるんだもん。
嫌なんて言えないよ。
『分かった。夜は大人しくしてる。』
ちょっとだけ残念だな。
日本の花火は凄いと聞いていたから楽しみにしていたけど、二人に迷惑かけたくないから諦めるしかないか。
「ごめん、我慢させて。終わったら、小さいけど手持ち花火を買って何処か行こうか。」
『手持ち花火?』
「やったことない?線香花火とかネズミ花火とか。」
『うん、そんなのあるんだー。楽しみにしてるね。』
打ち上げ花火が見れないのは残念だけど、帝と杏璃と小さな花火が出来るのなら……そう思って何度も仕方ない仕方ないと自分に言い聞かせた。
「縁日は朝からやってるから行ってみたら?」
『えんにち?』
「屋台が出てるけど……行ったことないの?」
『あるよ!』
一度だけ、あの人がたい焼きを買ってくれた。
二人で半分にして、たい焼きの食べ方で言い合いをしたことがある。
『行ってみるよ。杏璃たちも行くの?』
「うん、羅威たちが行きたがるからね。」
いいな、羅威たちは。
堂々と二人の隣に立てる。
「不良には気を付けてね。」
『はーい。あ!二人に聞きたいことあるんだけどさ。【大蛇】って知ってる?この手の話着いていけなくてさー……帝?』
それまで大人しく雑誌を読んでいた帝がソファーから立ち上がり、部屋を出ようとした。
呼び止めると、不機嫌な顔で振り返った。
「そいつらには関わるな。お前が知らなくていい連中だ。」
「ああ、紫苑。誰に聞いたか知らないけど、知らなくていいことに首突っ込まなくていいから。」
『え、あ……うん。』
さっきまでの和やかな部屋の空気は重いものとなり、頷かずにはいられなかった。
何とも頼りない私の返事に、帝は念押しして家を出ていってしまった。
それに続いて、杏璃もその後を追うように行ってしまって一人ぼっちになってしまった。
ああ、これが私と彼等の距離なんだ。
覚悟していたつもりだけど、この距離を詰めるのはもう少し時間がかかるんだ。
私はそれくらいのことをしたんだ。
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