第65話

「紫苑ちゃん!!」



きっと酒のせいで真っ赤になった大門が立ち上がり、紫苑も大門に近づいて二人の距離が近くなる。

帝も後ろからのっそりと部屋に入ってきた。

大門の顔付きが真剣で、見ている全員が息を飲む。

まさか、酒に酔って告白なんかしないよな?



しかし、紫苑は紫苑だった。

大門に買い物袋を押し付けると、一瞥することもなく大門の横を通ってベッドに……俺に駆け寄って来た。



「杏璃!?大丈夫?具合悪い?どうしたの!?」



紫苑は膝をついて俺と目線を合わせる。

そのまま思い詰めた顔で俺の額に手をあて、反対の手を自分の額に当てて熱を測り始めた。



『おかえり。なんでもないよ。』



「良かった……。」



ホッと息を吐き、安心したように笑みを浮かべ脱力したようにベッドに顔を埋めた。

嬉しくて、自然と頬が緩むのが分かる。

だからというわけでばないが、紫苑の頭を軽く撫でると紫苑は顔を上げて少しだけ目を見開いた。

ちょっとだけ、紫苑の瞳が潤んでいるように見えたのは錯覚だ。



『ありがとう、心配してくれて。』



「うん……。」



チュッ、とリップ音がして、気がついた時には紫苑が俺の額にキスをしていた。

混乱で固まった俺から離れ、へへへっと照れたように頭をかく紫苑に、次は俺の頬が熱を帯びる。

酔うほど飲んでいない。

だから、恥ずかしいとかちょっと嬉しいとか……てかなんでキスされた?



「杏璃の笑顔が天使すぎてちゅーしちゃった。あ!帝にもしてあげないと不公平だよね。」



「来んな、変質者。」



「紫苑ちゃん、俺ならいつでも大歓迎だよ!」



「え、ごめん。」



本気のトーンのごめんに流石の大門もショックを受けたのか、羅威に慰められてやけ酒を煽り始めた。

紫苑と帝の攻防が始まったのは言うほどのことのないお決まりだ。

その後も、有田が間違えてお酒を飲んでしまったり、大門が紫苑に告白しても本気にしてもらえなかったりと色々あったが、それは他愛もない話だ。










≪杏璃side end≫

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