第64話

≪杏璃side≫



紫苑と帝が買い出しに出て、部屋は少し落ち着きを取り戻した。

昨日は朝から自分の感情に負けて、紫苑に嫌な態度をとってしまった。

紫苑が帝にもたれ掛かって寝始めた。

帝も普段なら誰であろうと邪魔だと寄せ付けないのに紫苑には許していた。

餓鬼だって分かってる。

帝が誰に肩を貸そうがどうでもいいけど、紫苑はなんで帝の肩が良かったんだ。

ちょっと除け者にされたとか、二人はそんなつもりは毛頭ないことが分かっているのに嫉妬、なのだろうか。



……カッコ悪すぎ。心狭っ



「杏璃、どった?」



『ん?なにが?』



緋埜に声をかけられて、自分に視線が集まっていたことに気がついた。



「【大蛇】のこと?」



『それは今大人しいから別段考えてもなかった。でも、嵐の前の静けさって言うのかな。不気味なほど奴等の噂が聞こえてこないんだよね。』



「【大蛇】は大人しくて、【楽園】の王が消えた。なーんか起こりそうだよねー。」



それは俺も気にしている。

【大蛇】が何かしようときている気がして、妙に胸騒ぎがするんだ。

こっちからも足の付かないように情報を仕入れようとしているのだが、何も出てこない。異様なくらいに。



「それじゃあ、杏璃くんは何考えてたんだ?女の子のこと?」



『大門じゃないんだから違うよ。』



「まあ、俺の心は今紫苑ちゃんだけだから。」



『……は?』



「「大門まじで!?」」



「まじ」



「あの芋虫?」



「大ちゃん……!」



「ちょー可愛い。あんな可愛い芋虫なら大歓迎!」



【神王】メンバーだけじゃなく、【天王】メンバーまでもが大門を見て驚きを隠せないでいた。

あの竜胆透でさえも、表情が顔に出ている。



いやいや……大門が女好きなのは皆知っている。

でも、大門が一人の女の子だけなんて……しかもそれが紫苑だなんてっ!!

あり得ない。



たしかに紫苑が転校して来たときに騒いでいたし、連絡先も素早く交換していたみたいだし。

紫苑は外見はそりゃ美人だし、性格だってそりゃ優しいし寝顔も可愛いけど……でも、黙っていれば綺麗だけど喋ると残念と言うか。

ここ数週間一緒にいれば昔と変わっていないのは分かってる。

それはつまり、元からの変わった性格も何一つ変わっていないと言うこと。



大門はモテるから、一途とか想像できないけど良い奴なことはよく知っている。

でも、でもさ、まだ彼氏とかそんなのよりも……



紫苑が芋虫になっていたベッドに寝転がり、力が抜けて目を瞑る。



「お、帰って来た。おかえりー。」



「たっだいまー……何、この空気。」

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