第61話

『君にしか聞けないことなんだ。』



ちょっと挑発するように上目遣いをして、ほんの少し色を滲ませた瞳で復活した大門に近寄る。

大門の喉が上下して、紅潮した耳に口を寄せる。



「お!なになに?なんでも言うよー!」



『優しいなー。じゃあ、帝と杏璃の恋愛事情を教えてほしいな。』



「「おい!」」



この前聞いても結局教えてはくれなかった問題を提示すると、杏璃が私と大門の間に入り、帝が大門の口にチー鱈を大量に詰め込む。



『だってーこの前教えてくれなかったじゃん。この手の話に詳しそうだし?』



「だからってあんなっ!……ゆ、誘惑するみたいに言わなくてもいいでしょ!?」



『一応二人の仲間だから口軽いわけないでしょ。だから。誰にもこんなことしないよ?大門なら効くかなって』



「だめ!絶対だめ!今後誰にもだめ!絶対今酔ってる!!」



『大丈夫、私ザルだから。』



いくら大門でも、この方法で騙されないよね。

杏璃も黙ってるけど睨んでくる帝も、滅茶苦茶怒らせてしまった。何故だ?



「今まで他の男にやったことないよね!?」



『うん。今日初めて。やっぱ無理かー』



「それより、大門とアンタのせいでチー鱈なくなったんだけど?」



それ、帝さんのせいです。

緋埜と羅威に思いっきり睨まれてしまった。



『……帝さん、買いに行きましょう。』



「一人で行け。」



「だめ。紫苑一人で行かせる方が危険。周りが。」



「チッ」



姉よりも周囲が危険ってどういうことだ。

苦虫を噛み潰したような顔をした帝は、一つ大きな溜め息を吐くと立ち上がった。

もとはといえば、帝が大門の口にチー鱈を突っ込んだせいだと思うんだけど。



「早くしろ。」



「紫苑、適当におつまみ買ってきて。」



『はーい。』



おつまみって、美味しくてついつい食べちゃうけど入ってる量って大人数だと少ないよね。

財布とスマホをポケットに突っ込み、先に部屋を出た帝の後を追いかけた。



ホテルを出て海沿いに真っ直ぐ歩いて行くと、5分くらいでコンビニに到着した。



『チー鱈と、あと……帝?』



「煙草吸うだけだ。」



『煙草駄目だよ。体に悪いんだからね。』



「うるせ」



『やめろ。』



外の喫煙スペースに行った帝の腕を掴み、胸ポケットの煙草を引ったくった。

この銘柄……何の因果だろう。



「……。」



『お願いだから。』



「分かったから離せ。」



『ごめん、』



帝は私の手からチー鱈の入った買い物かごを奪うと、適当におつまみを入れてレジを済ませてしまった。

その間、帝から奪い取った煙草を握り締めて離したいのに握る指の力が強くなる。

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