第60話

楽しそうに帝の話をする杏璃を、帝は睨み付けて鼻で笑う。



「お前も趣味あんだろ。飯ばっかり作って。」



「その言い方、もうご飯作ってあげないよ?明日から帝のご飯なしだよ。」



「……。」



罰の悪そうな顔で落ち込んでしまった帝の肩を叩き、にやける顔を必死に抑え込む。

素直に謝れないのが可愛いなあ、全くもう。



『はい、帝の負けー。杏璃はいいお婿さんになれるよ。私がほしいよ。』



「はいはーい!俺、紫苑ちゃんのお婿さんに立候補しまーす!」



「「うるせぇ」」



ゴッ、と鈍い骨と骨がぶつかり合う音がして、例として大門が倒れていた。



「大ちゃん……」



「有田、その馬鹿は転がしといていいよ。それよりも、紫苑は趣味とか好きなのないの?」



哀れ大門。

優しい真白が大門の飲み物の缶で患部を冷やしてあげていた。



そういえば、趣味とかなかったな。

何もない時はぼーっとしていて、“渡された写真”か本ばかり読んでいた。

そう考えると、私って本当につまらない人間だ。

だから、彼等は私に色んなものをやらせたがったのかな。

彼等と何かをするのは、楽しかったし大切な思い出であの瞬間だけは無機質な人形の感覚はなかった。



『私はイモムチくんが好き!』



ただ唯一と言ってもいい、アイツがお土産だと言って買ってきた何気無いキャラクターストラップにだけはハマったんだよな。



挙手をして答えると、凛が空かさず反応して私の手とハイタッチした。

イモムチくんの可愛さを理解してくれたのは凛が初めてで、私も凄く嬉しい。

凜には毛嫌いされていたが、イモムチくんパワーで仲良くなれたのだから同じものが好きって強いよ。



「……いつの間にそんなに、」



「そういえば、さっきイモムチくんの新作ぬいぐるみが数量限定で発売するって記事みた?」



『え、それは知らなかった。どれどれ?』



「ほら、これ。」



『うわービッグイモムチくん!』



「理解できない。」



イモムチくんトークで盛り上がっていると、一つのスマホを覗く私と凛の間に杏璃が割り込む。



「なに?そんなに姉が取られるの嫌なの?クールな澄ましてるけど、嫉妬深くて独占欲の塊だったんだね。【神王】の副総長様はシスコンだったんだー。」



『え、照れる。私もブラコンだからウェルカムばっちこい!』



ウインクして両手を広げるが、二人とも来てくれなかった。

むしろ引いている。



「酔ってる?」



「寝てろ。酔っ払い。」



『素だよ。』



私ザルらしいからね。

二人のことはずっと今までもこれからも愛している。

自分が相当なブラコンだと言うことは自覚しているんだ。

だから、私には私の中で気になっていることを突き止めたい。



『ねえ、大門。』



「はいはい?」

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