第46話

悔しさを沈め、ヘラリと笑って二人の元へとゆっくりと歩み寄る。

最初は笑っていた二人だったが、私の様子の微かな変化を感じ取ったのか顔をひきつらせた。



始めに気が付いたのは帝だった。

避けようとする帝の腰に腕を回し、力一杯空へと投げつけた。

投げつけられ、高い水飛沫を上げた兄を見て、ぎょっと目を見開く杏璃。

そして、立て続けにたじろぐ杏璃の腰にも腕を回して帝とは反対側に思い切り投げ飛ばした。



『お姉様に勝とうなんて、10年早いわ!』



「チッ」



「はあ……っ、はぁ……怪力」



高らかに笑う私に、予想外の結果となった弟たちは本気で悔しがっていた。

杏璃は少し引いている。

それから、そんな私たちを見ていたAくん、Bくん、大門が大笑いをして砂浜に転がっていた。

離れたところで透も呆れながらも珍しく笑っている。

そして、あまりに異様な光景に他の生徒たちも好奇の目で私たちを眺めていた。



二人に背を向け、浜に上がろうと油断しきった私の背後に、音もなく杏璃が忍び寄るが気配でバレバレだ。



『杏璃くん、見えてるよー。』



「くそっ…」



『帝もバレバレだからね。』



「……」



水を含んで重くなったワンピースの裾を絞り、恨めしそうにこっちを見る二人に足で水を蹴り飛ばした。

投げ飛ばされたせいでワンピース重くなっちゃったよ。

このまま着てるのも気持ち悪いしなーどうしよう。



パラソルまで戻って、荷物からタオルを取り出して透の隣に腰を下ろした。



「女とは思えない怪力ね。あれは笑えた」



『私そんなに力ないんだけどなー。』



周りが怪物ばっかりだったから。

負けないように、鍛えてきたつもりだ。

そういえば、最近は組み手とかもしてなかったな。

潤とか面倒くさがって嫌がるし、誰も相手してくれなかった。



それにしても、ワンピースがペタペタして気持ち悪い。

仕方ない……脱いでも水着だから脱いでしまおう。



黒は好きだけど、こんな紐じゃ頼りない上にビキニは下着と形変わらない。

首の後ろで紐が結んであるから、背後から簡単にほどかれてしまいそうだ。

たくさん試着させられたおかげで“見せられないもの”が隠れるものを選べた。



『これ、どう思う?』



「そんなの弟に聞いて。」



『これ、布面積少ないよね?あの子みたいな、洋服みたいなのが良かった!』



「そ?変わんないと思うけど。水着なんて皆面積少ない。それに、あの下もアンタと同じ形の着けてる。スカートとかセットになってるやつでしょ。」



『おお!だったのか。』



いつの間にか、砂浜にはビキニ姿の女子が増えていたことに今更気が付いた。

メイクも髪もバッチリ決めた女の子たちが見つめる視線の先には、私と同じ髪の男が二人。

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