第43話
帝は無言のまま、迷いのない足取りで進んでいく。
時折スマホを見て、何処か特定の場所に向かっているようだった。
そして、木が生い茂る長い石段の前で足を止めた。
『ここって…』
見上げると、大きな赤い鳥居が緑に隠れている。
足が勝手に石段を上っていく。
その私の後ろから、ゆっくりと帝が着いてくる。
『こういうところ、昔と変わんないんだね。』
「覚えてたんだな、俺たちのこと。」
『当たり前だよ。』
忘れるわけない。
喧嘩したり、落ち込んだら神社に逃げる癖。
だって三人とも同じだったから、結局すぐ見つかるんだもん。
「置いていったくせに……」
『え?』
ボソッと帝が何か言ったが、それは木の葉の擦れ合う音に紛れて聞き取れなかった。
「早く行け」
『……はい』
帝に背中を押されよろけそうになったが、無事長い石段を登りきる。
一際大きな鳥居があり、静かなその空間はさらに奥へ奥へと鳥居が続いている。
酷い既視感に若干の眩暈と胸がざわざわと揺れる。
『ここ、彼処みたいだね。覚えてる?ちっちゃい頃住んでた近所の……あっ、杏璃!』
「っ……紫苑、と帝」
鳥居を抜けると、賽銭箱の奥で寝転がっている杏璃が見えた。
ゆっくりと起き上がって、目を見開いていた杏璃はすぐに不機嫌な顔に戻って座り直した。
帝は入り口のところで立ち止まり、スマホをいじり始めた。
「なんでここが?」
『帝が案内してくれたよ。盲点だったよ。癖って変わらないんだね。帰ろ、杏璃。みんな心配してるよ?』
「……紫苑は?」
甘える子犬のような顔、潤んだ瞳で上目遣いは悶え死にそうなほど可愛い。
『当たり前よ!』
へらりと笑って見せ、俯いた杏璃の頭をわしゃわしゃと撫でてから力一杯抱き締めた。
『戻ろ?杏璃』
「……もうちょっとだけ」
すり寄って甘える杏璃が満足するまで抱き締めて、そんな私と杏璃を少し離れたところで帝が静かに見ていた。
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