第41話
意識はふよふよと浮き沈みして、私にしては寝れた方なんじゃないだろうか。
少しだけ、昔の夢を見た。
不敵に嗤った横顔に手を伸ばしても、それは煙と消えて掴めない。
その場面の時、肩を揺すられ目を覚ました。
既にバスには私と帝の二人だけだった。
「……お前、一人でなんとかしろよ。」
『ん?何が?』
謎の言葉を残して帝は私を押し退けてバスを降りた。
そして今、私たちは二時間の神社や観光名所巡りを終え、一先ず宿泊施設に向かっているのだが……
『何で拗ねてるのさー』
「……別に」
杏璃くんのご機嫌が斜め斜めの最早絶壁状態。
『帝、なんで?』
「…」
まるで私の存在がないかのような綺麗な無視っぷり。
うわー、もしかしてさっきの帝の謎の言葉はこれを指してた?
杏璃が不機嫌な理由が皆目検討もつかない。
仕方ない。こういう時は放置に限る。
「なんとかしろ。」
『えー』
負のオーラを撒き散らす杏璃に、何故か捕まっている帝は面倒くさそうに顔を歪める。
『よく分かんないけど、杏璃くんちょっとお話しようよ。』
「…」
「離せ。」
杏璃の腕を振り払った帝は一人ずんずんと進んで行ってしまった。
空気を読んだ真白や大門たちも帝の後を追うように行ってくれた。
暫しの沈黙。
重い口を開いたのは私だった。
『杏璃……もしかしてさ、』
まさか今それを気にして怒っているのだろうか。
何故分かってしまったんだ。
『冷蔵庫にあった杏璃って名前書いてあったコーヒーゼリー食べたこと、怒ってる?』
「……は、」
『ごめんなさい…』
「そうだったんだ。コーヒーゼリーなんかどうでもいい。」
そっか。それは良かった良かった。
でもそれじゃあ、彼は何に不機嫌になっているのだろう。
『杏璃がなんで不機嫌なのか分からないよ。私が何かしちゃったなら言ってほしい。』
「……別に。俺の問題だから、気にしないで。」
『気にするの!』
私のせいだけど、私は杏璃や帝との空白の年月がある。
その間、二人はお互いのことをよく理解し合える時間があった。
だから帝は、私には皆目検討もつかない杏璃の機嫌が悪くなった理由を察している。
『言葉にしてくれないと、人の気持ちなんて分かんないよ…。』
無性に悲しくなって、語尾に覇気がなくなる。
『教えてほしい、なんて傲慢だね。』
求めてはいけなかったのに、深入りなんて許してもらえないものだったのに。
二人に再会して、欲を覚えたようだ。
「……帝ばっかり……やっぱりなんでもない!」
ボソボソと何か言ってから、突然杏璃は逃げしだしてしまった。
辛うじて聞き取れた“帝ばっかり”の言葉。
帝さん、アンタ関わってるじゃないですか。
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