第40話

『おやすみ』



パーカーを深く被り、腕を組んで眠ってしまった透に呟いた。

そういえば、アイツも同じような体勢でしか寝ていなかったな、と既視感に襲われる。



「しーちゃん、海入る?」



『あー……考え中。』



このバスの移動時間で、あの水着と潤から逃れる方法を探そう。



「えー!紫苑ちゃんの水着楽しみにしてたのにー!」



「大くんはナンパするんじゃないの?」



「真白~ヤキモチ?」



『ポジティブって強いわ。』



真白と大門の言い合いがヒートアップしても、杏璃たちは全く気にする様子もなく各々好きなように過ごしている。

私も寝ようかな。



『真白、おやすみ。』



「え、寝ちゃうの?うん…おやすみ」



捨てられた子犬のような潤んだ瞳にぐらついたが、なんとか耐えて目を瞑った。

しかし、目を瞑ったところで人の気配が多すぎて寝れるわけがない。

ここは今までとは違う。だから大丈夫。

頭では分かっていても染み着いたものは消えてはくれない。



『……あんりー』



目を開けると、何故か真白と大門が軽い取っ組み合いをしていた。



「ん?」



『席変わって。』



「いいけど、帝寝てるよ?」



『うん』



杏璃はキョトンっと目を丸くして席を立った。

帝の隣に座り、まずは寝顔を拝見。

そして、帝の肩にもたれ掛かり今度こそ寝ようと目を閉じた。

石鹸の香りと混ざり合った帝の匂いに、ホッと息を吐き出した。




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