第36話

「女は水着だのを気合い入れて選んで減量するもんだろ。」



そ、そうなのか。

育った環境が環境なだけに分からん!

だが、女性との経験豊富な潤が言うのだからそうなのかもしれない。



『……減量、か。暫くぶりに稽古をしようってこと?』



「馬鹿。脳筋馬鹿!引っ掛かるところそこじゃねぇよ。」



『やらねえの?』



「やんねぇよ面倒くせぇ。水着に引っ掛かれ餓鬼。」



水着かー。そんなものとは縁が無かったから困る。



「仕方ない……無知で脳筋の乳臭い餓鬼のために、特別にこの潤様が水着を用意してやろう。」



『いや、結構で』



「そうかそうか、嬉しくて言葉もでないか。ということだ、明露。」



『……明露?』



どうにかこの俺様馬鹿を止めてくれないか、と懇願の瞳で見つめてると明朗は溜め息をついて眉を八の字にした。



「……紫苑、すまない。この人、此処に来てからこっちと向こうの書類仕事ばかりで退屈しているんだ。」



『めろーさん?』



「すまない。そんな目で見ないでくれ……」



最後の頼みの綱も無惨に散り、すがる藁もない私は臨海学校の二日前に必ず理事長室に来るようにと言われた。



『来れなかったら?』



「放送で呼び出して、お前の恥ずかしいエピソードを読み聞かせする。」



真顔で言い切る潤のガチ感に、本当にやられると背筋に悪寒が走った。



『もう帰るわ……』



「約束忘れるなよー。」



『あい。』



紫苑が出ていったあとの理事長室で、黒スーツの男が二人向かい合わせに座った。



「それで、潤?紫苑の水着姿写真を、どうつもりだ?」



「アイツらに売る。」



「……そんなことしたら、奴に狙われるよ。俺は助けないからね。」



呆れて溜め息を吐く明露の言葉は、退屈をもて余す潤の前では無意味に散ったのだった。




───

──



今日は、臨海学校前々日。

ここ数日、私は弟二人の部屋に入り浸るのが日課となった。

学校では全く会うこともなく、真白に暴行を加えようとした男を倒した相手を調べているというのは風の噂で耳にする。



『杏璃ー水着持ってくの?』



ソファーで寛ぐ帝のお膝を陣取り、杏璃の膝の上に脚を乗せて寝転がってテレビを見ていた。



「え、うん。臨海だよ?」



『海か……あははっ!この人誰?変なのー』



「知らないの?今ブレイク中の芸人」



『ニュースしか見ないからなー。』



「ふーん……話戻すけど、水着持ってるの?」



『え……多分、明日くれるんだと思う。」



「誰から?」



『え?……うーん、』



潤は私の上司のような、師匠的な存在だけどそれは言えないし……友達でもない。

だが、知り合いというには関係が濃い。

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