第29話

『そんじゃ、私は学校に向かう前に自分の部屋でお風呂と着替えをしてこようかしらね。』



「……またそうやって、俺たちをおいていくんだね。」



『学校一緒に行きたいってこと?』



知ってるよ。私の言葉が不正解だってことは。

ごめんね、私ずるいから「もうおいていかないから」なんて言えないんだ。



「はぐらかし女。」



『嘘はついたことないよ。二人にはね。それとも、嘘でも正解がほしい?』



「希望のない望みなんかいらない。」



『そ。二人と学校行ったら騒ぎになりそうだから、またね。』




最悪、最低、大嫌い、いなくなれ。

醜く惨めな自分への、最大の賛辞。



二人の顔を見て、チクッと針が刺さった痛みに乾いた笑みが零れる。

私にも、まだこんな感情がいてくれたんだ。

杏璃の怒りと悲しみが滲む顔と、帝の読めない顔色が一目で脳裏に焼き付いて、逃げるように部屋を飛び出した。




────

──



自分の部屋に帰ったら、学校に行く気にもならずにどうせならと一日サボったのだ。

部屋においていってしまった携帯には、透や真白からメールがきていた。

そして何故か、大門とか言う初日に連絡先を聞いてきた男から大量のメールと電話、おまけに留守電も埋め尽くされていた。



「転校初日に【神王】のツートップに追いかけられて、4日間の無断欠席。学校ではアンタが死んだって噂が出回ってたわよ。」



『無事生還ってやつ?』



「で?4日も休んだ理由は?」



『スルーか。ただゲームしてただけ。徹夜でね!』



今は一時間目の真っ只中。

眠い朝のHRが終わった直後、透に空き教室へと連行されたのだ。

透は窓の外を眺めながら、大きくため息を吐き出した。



「馬鹿だったわ。」



『心配してれてたの?透ちゃん。』



「ええ、損したわ。」



意外なことに素直に認められると、次はなんと返せばいいのやら。

押し黙った私に透は横目を向けて、視線をまた窓の外に戻した。



「紫苑は直球に弱い。変わらないのね。」



『私って怖がりなんだよ?こう見えてもね……』



「それよりも、逃げて解決策は浮かんだの?」



『うーん……それがさー。会っちゃったんだよね。』



頭を掻きながら、他人事のように苦笑いをした。



「残念。もっとおいかけっこ見られると思ったのに。」



『なにそれ!ひど』



透の見つめる窓の外を眺めながら、反射して写る薄情者の面を睨み付ける。



『そういえば、真白どうしたんだろ?』



「昨日はいたけど。」



考えすぎかな。

でも、初めて街とあった時も変なのに絡まれていた。

言い様のないザワつきに、携帯を取り出して真白に電話をかける。



『……留守電だ。』

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