誘拐
第28話
窓から差し込む光よりも、寝苦しさに意識は浮上した。
暑いし重い。
『うっ……ん?』
何故私の部屋に二人いる?
昨日は……そうだ、二人とゲームして面倒でどっちのか分からないベッドを借りたのだった。
真横で添い寝のように眠るのは帝。
私のお腹を枕にして丸まって猫のように寝ているのが杏璃。
『っ、』
二人が起きたら、またゲームに付き合わされるかもしれない。
ならば、鬼の寝ている隙に逃げるしか!
お腹の上の杏璃を出来るだけ優しく転がし、帝を跨いでベッドを抜け出す……瞬間に脚を思いきり引っ張られて体が中に浮いた。
『ひゃっ!』
「フッ……どこ行くの?」
「っ……チッ」
バランスを崩して、帝の真横に落っこちる。
頭は帝の腹部に強打してしまった。
逞しい腹筋を持つ帝は、最悪の目覚めだと鋭い眼光で睨み付ける。
睨まれたのは私だが、原因となった脚を引っ張った犯人は杏璃。
目を擦りながら体を起こし、笑いながら伸びをした。
「ひゃっ、て……ククッ」
『内臓出そうだったんだけど?』
「それは、俺の台詞だ。」
隣に横になっていた帝が、体を起こして威嚇体制を取る。
「……お前ら、俺の部屋で何してる。」
『ベッド借りるって言った。』
「杏璃。」
「二人が一緒に寝てるから、仲間外れにされたと思って。」
『可愛いなー杏璃くん。』
「男は可愛いって言われても嬉しくない。」
拗ねてそっぽを向いた時、跳ねた寝癖がピョコンッと揺れるてダンスしているように見える。
『プッ……ごめんて。』
「笑った。謝罪に誠意を感じない。」
『はいはい、ごめんね。そうだ!二人は彼女いないの?』
もしも彼女がいたら、いくら姉とは言え見知らぬ女が数日間も彼氏の家に転がり込んでいると誤解されるかも。
私は無理矢理ゲームに付き合わされただけで、寧ろ被害者なのに修羅場とか面倒くささの極み。
「そういう紫苑はどうなの。」
『……さあ?』
「なにそれ。自分だけ逃げるとかなし!」
『私教えてもらえてないし。』
「……俺も帝もいないけど何か?」
ムスッと不服だと拗ねる杏璃の頭を乱暴に撫で、複雑な姉心は苦しんでいる。
可愛い弟たちに彼女がいたら勿論応援するが、ちょっと寂しいのもまた事実。
『うん、まあ。がんば』
「頑張らなくても作ろうと思えば出来るもん。」
『そうね、誰でもって訳じゃなくて安心したよ。』
「当分は紫苑で我慢してあげる。」
『可愛くなーい。』
憎まれ口を叩く杏璃の頬を引っ張り、その顔をカメラで撮影してやった。お仕置きだ。
抵抗で掴みかかってくる杏璃の頬から手を離し、後ろ向きに部屋の扉へと向かう。
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