第14話

『透ちゃん、教科書見せて?』



「チッ」



怖い怖いとわざとらしく震えて見せると、乱暴に机を引っ張られた。

優しい所は昔と変わらない。

少し荒っぽくなっているのは、この際目を瞑る。



「何処、行ってたの。」



『何処だと思う?』



「その、掴み所のない飄々とした所も昔と変わらない。」



ケラケラと笑うと、視線を感じる。

他の生徒の声を聞いていると、透は敬遠される対象なのか。

それは悪意と言うより、羨望を帯びているようだ。



『透も変わらないから……ちょっとホッとした。』



「……そうそう変われないものだ。」



『そうかなー。』



私も、透から見たら変わらない?

鏡に映った私は、醜く赤い色をしているよう見える。

それが、時々狂気となって私を呑み込む。



「なんで、戻ってきたの。」



『……やり残したことをね、するために。』



「やり残したこと?」



『まあね。またよろしくね、透。』



「……。」



私はうまく笑えてるかな。

怪訝な顔をする透の心のうちは、読みにくい。



授業が終わると、数人のクラスメイトが話しかけてくれた。

遠巻きに見ていた生徒も、害がないと判断すると一言二言言葉を交わした。



確かに、見た目で判断するのは惜しい。



「一年間、よろしくな。」



『おう。』



ふにゃっと笑った顔は、ただの派手な少年少女たちだった。





《紫苑side end》

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