第12話
窓の前に立ち、私を見つめる高身長で細身のスーツが似合う男。
理事長室にいるのだから、この人が理事長と呼ばれる地位にいることは分かる。
しかし、私はこの男を知っていた。
「久しいな、紫苑。」
『……潤(じゅん)。』
所属していた組織の、私の元指導係だった人。
それなら、秘書のような振る舞いをしていた人間も自ずと分かる。
「紫苑。」
『
潤の相方役の明露。
大きな図体で、少し長い黒髪を後ろで結わいている。
彫りが深く、日本人離れした顔立ちは“絵本の中から出てきた王子様”と言われているのを聞いたことがある。
潤のクールな印象とは違い、明露は柔らかい、優しい雰囲気を纏っている。
潤はソファー席に腰を下ろすと、顎で向かいの席に座れと促してきた。
『顎で指図されんの、嫌いって言っただろ。』
「早くしろ。」
『……。』
相変わらず、どこに居ようとも横暴で人の話なんて聞こうともしない。
向かいの席に座ると、明露がお茶を淹れてくれた。
明露が潤の隣に座ったことで、一番の疑問を口に出す。
『なんで二人が此処にいる?仕事はどうしたの。クビ?』
「仕事してんだよ。てめぇみたいに有給野郎とは違うんだ。」
「これもボスから与えられた、任務のひとつです。」
『……ふーん。』
「労え。」
『お疲れー。』
舌打ちされたが、自分から労えと言われると労う気が起きない天の邪鬼的なもの。
「お前のクラスは2年E組だ。」
『分かった。』
真白が何組なのか、聞いておけば良かったな。
したい話もなく、立ち上がるとお茶をすする潤は脚を組み換える。
「皆が、紫苑がいないと騒いでいた。」
『あー……なんも言わずに来たからなー。天樹から電話きたし。』
「お前の人生、誰かに指図されるもんじゃねぇ。好きに生きて、野垂れ死ねばいい。」
潤の励ましているのか、ただの暴言なのかはたまた両方なのか分からないが、激励として受け取っておこう。
「担任を呼んである。」
『ああ、助かる。ありがとう。』
10分後、やって来た担任はおじいちゃんと呼べる年齢の腰が曲がったベテラン教師。
出席簿、古典の教科書と使い古されたノートを持っていた。
おじいちゃん先生に案内され、教室の前までやって来た。
「櫻小路さん、東高校へようこそ。うちのクラスの子達はね。ちょこっとやんちゃだけど、根は良い子たちなんだ。仲良くしてあげてね。」
『はい。』
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