第11話
真白の頭をポンポンと撫でると、私の胸に飛び付いて抱き着いてきた。
少しでも安心させたくて、抱き締めると私を見上げる。
涙で潤んだ瞳に、無表情の私が写る。
「お恥ずかしい所、お見せしました…。紫苑さんは、なんでここに?」
『今日からここに編入するの。』
「え!本当に!?嬉しいっ!」
『よろしくね。』
真白に案内されながら、理事長室を目指す。
隣を歩く真白は、鼻唄を歌い出しそうな程ご機嫌だった。
『紫苑さん、クラス何処だろう。同じだったらな…、いやっ!私と一緒なんて嬉しくないですよね。あははー…、』
自分で言って、勝手に凹んで本当に表情豊かな子だ。
真白の頭を優しく撫でると、自分でも頬が緩むのが分かる。
『嬉しいよ。一緒だったらいいね。』
「う、うん……心臓に悪いよ。」
『ん?心臓がどうした?』
「なんでもないよ!」
心臓に……から声が小さすぎて、聞こえなかった。
真っ赤な頬っぺたをぷにぷに触ると、次は怒り始めた。
「もう!紫苑さん!」
『その、さん付けいらない。』
「い、いいの?」
『まあ、真白の好きに呼んでくれて構わない。』
真白は目を輝かせると、ぶつぶつと顎に手を当てて考え込む。
何をそんなに悩んでいるのかと耳を済ますと、呪文のように独り言を羅列している。
「あ、じゃあ!しーちゃんでも、いい?」
『ああ。』
随分と可愛らしいあだ名を付けられたものだ。
きっと、長いこと私を知っている彼等が聞いたのならば、からかわれ、ネタにされて笑われるに違いない。
「あ、ここが理事長室だよ。」
『わざわざ案内してくれてありがとね。』
真白と話していておかげで、体感的に早く着くことが出来た。
校内の雰囲気も見て回れたし、やはり案内してもらえると有り難いことだ。
「ううん、私も助けてもらったから。本当にありがとう!」
『またね、真白。』
「ま、またね!しーちゃん!」
またね、と聞いた瞬間、真白は目を見開いて驚いていた。
それがどんな意味があるとか、深く考えることはしなかった。
真白の後ろ姿を見送り、理事長室の重厚感のある扉をノックした。
男の人の低い無愛想な声と共に、その重々しい扉が自動で開いた。
軽くお辞儀をしたスーツの男の人が開けてくれたのだと見てとれる。
「ようこそ、東高校へ。」
『アンタ……、』
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