第165話



「お!次じゃーん!」



次の仁の番がきた。

恭さんは前に移動すると、真新しいビデオカメラを取り出した。

シスコンって凄いな。

恭さんは基本、仁のためにしかお金を使わない人だから、その真新しいビデオカメラはCMでも綺麗に撮れると有名な新型モデルだった。



「きょ、恭さん?」



「恭弥?あんた何してんのよ」



ひかとひなたさん、赤西昴と黄崎梓がビデオカメラを掲げる恭弥を目を見開いて凝視。



私や龍さんたちは、いつものこと過ぎてもう苦笑いだ。



ひなたさんたちの問いかけに一切答えることない。

手にはビデオカメラを持ち、目は仁のみをじっと見ている。

私も仁を見るために最前列の恭さんの隣に並ぶ。



恭さんは仁に声援を送っているが、周りの仁ファンの熱と声量が凄すぎて、隣にいる私にしか聞こえてこない。



「姫ちゃん、なんか仁の顔色が悪くない?」



『さっきトイレから帰ってきた時から真っ青で……何もないって本人は言ってたんですけど。』



「そう。」



さすがシスコンだ。

遠くからでも妹の異変に気づいている。

心配して眉が八の字になっている。

龍さんたちを見ると、3人も眉を寄せて心配している。



「もしかして、妹さんが走るの?」



『ええ。』



「あの人ちゃんと走るんすかね?」



「洸雅、お前喧嘩売ってんのか?」



いつもの雰囲気とは違い、ブラックで言葉遣いも荒めな恭さんは視線だけで洸雅さんを攻撃している。



「滅相もないっす!」



「恭弥の妹!?そんな子がいたの?」



ひなたさんは初耳のようだ。

それを聞いたひなたさんたちも前に出て、誰だ誰だと探し始めた。



「位置についてっ!よーいっ!」



パァンッ、と



スタートは順調で、仁も1番にボックスにたどり着いた。

お題の紙を取ると、暫しのフリーズ。

しかし、すぐにキョロキョロと辺りを見渡す。

見つからないのか困った顔をしている。



『仁ーっ!』



他の選手のように大声で人に聞くことも出来ないだろう。

お題が何なのか聞こうと手を振ってきた声をかける。



一瞬、恭さんたちを見て目を見開いて驚いた表情をした。

すぐに顔が明るくなる。

恭さんが来てくれて喜んでいるのだろう。

仁もブラコンだからね。



真っ直ぐに走ってくると手を掴む。



「来て」



「え?ちょっと」





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