第164話



「姫が知ってるってことは、仁くんとも知り合いなの?」



『ええ、そうね。』



ひかがひなたさんに聞こえないように、私だけに聞こえるように小声で話しかけてきた。



知り合いもなにも、兄妹なんだけど。



「じゃあ、妹さんのことも?」



『え、ええ。』



「あんたたち、何しに来たのよ。」



「そんなことお前に関係ないだろ。」



「その喋り方も昔とは違うのね。」



「そうかな。」



恭さんとひなたさんは、まさに仁と灰原一心のように水と油状態だ。

一触即発の勢いだ。



喋り方?

いつもこんな感じの物腰の柔らかい話し方だけど。



「とんだ猫かぶりね。」



「どっちも俺だよ。」



こんな会話がされている中でも、競技は続いている。

中々難易度の高いお題が多いようだ。



叫ぶ声を聞くと、“はさみ”やら“カツラ”やらのよくあるお題から、中には“ハンガー”や“二千円札”とここにあるの?と思うものまである。

物以外でも“スーツを着た人”などこれまた見つけにくい人が多い。



「あ!次亮くんだ!」



たくさんの選手がお題を見つけられなくて、棄権していく中、3番目の亮の番になった。



「位置についてっ!よーいっ!」



パァンッ、と一斉にスタートする。

亮が一番にボックスについた、が問題はここからだ。

ある意味運試しも入っているこの競技。



お題の紙を見ると、一目散に何処かへと走り去って行ってしまった。



その間に、“クマのぬいぐるみ”や“目覚まし時計”などの体育祭には持ってこないようなものを探している。



少しして、半分の選手が諦めて棄権して行く。

そして、亮が走り去って行った方から歓声が上がる。



何処かへと走り去って行った亮が帰ってきたが、その肩にはあるものが担がれている。

赤くて、余り普段触れないもの。















────────“消火器”

















……それ、何処から持ってきたの?

その前に、それって持ってきていいの?

余裕で担ぎ上げ、走っている亮にも驚く。



そのまま1位ゴール。



「緑川選手がゴールしました。お題は……“消火器”!クリアです!1位ゴール、おめでとうございます!」



ガッツポーズをしてから、此方に手を振ってきた。

その姿は凄く可愛くて、女子の黄色い歓声と男子の野太い声が上がる。






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