第131話



この異様な空気の中、俺の携帯は空気を読んではくれなかった。



ゲッコォ ゲッコォ ゲロゲ~ロ



『……。』



「……。」



「何ですか?これ」



「カエル?えっ!な、なにこの声!」



「誰だよ~カエル連れてきた人~」



シーンと静まり返った教室。

鳴り響く超リアルな蛙の鳴き声。



灰原は青筋を立て、黄崎たちはカエルを連れてきた犯人探し。



灰原よ、怒らないでくれ。

そして犯人探しをしても、犯人なんていない。



何故ならこの蛙の鳴き声は、俺のお気に入りの着信音。



変える気なんてない。

普段ならば、恥ずかしくもない。

しかし、この緊迫していた空気の中では話は別。

非常に気まずい。



出れるだろうか?

いや、そんなことが出来るのは空気の読めない奴だけ。

俺の携帯と同じ奴だけ。



多くの野次馬がいる中で鳴り響いたこの鳴き声に「なんだ、なんだ」「誰が連れてきた?」といい始める。



一度泣き止んだ俺の携帯。



しかし、またすぐに電話がかかってくる。



ついには、「気持ち悪い~」という悲鳴まで上がる。



俺の携帯は鳴っては切れて、鳴っては切れてを繰り返す。

ここで、この電話の相手は姫だと分かった。

他の人なら、こんなに連続で電話してくる人なんていない。

分かってしまったら恐怖が募る。



周りの野次馬までもが犯人探しを始めてざわざわとした。

余計出づらい。

しかし、怖い。



「なんか~。一心のそばから聞こえないー?」



これ以上は無理だ。



ポケットから携帯を取り出すと、さっきよりも音が大きくなる。

たくさんの視線が手の中にある携帯に集まる。



皆が呆気に取られた顔になり、次第に我に戻ると



「えっ……白石くん?」



「カ、カエル?」



「カエル、か、可愛いよね」



「う、うん。スゴクイイトオモウヨ。」



皆さん、目が泳いでますよ?

しかも、片言で嘘なのがバレバレです。



ゲッコォ ゲッコォ ゲロゲ~……ピッ!



『んー?』



「ちょっと、無視してるんじゃないわよ!」



静かな教室に姫のお怒りの声。

耳が痛くなって、携帯から少し耳を離しても聞こえる彼女の大きな声。



……やべぇ、怒ってる!



思わず姿勢が良くなる。



“女王様モード”の姫に逆らうべからず!

これは俺の長年の教訓である。




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