第126話



《ひかりside》



時間が止まったように感じた。



周りの音が一瞬で消え、ドキドキと音を立てていた心臓が止まったような気がした。



「……黙っててごめん。騙してたことになる。……ごめん。」



…………え?

彼は何を言っているのだろう。

嘘?冗談?



そんなこと言う人じゃない。

そのくらい知ってるよ。



じゃあ、真実なんだ。



『…………ふぅっ…………うぅっ……ひくっ……』



泣くよりも、何か言わないと。

でも、何を?



言葉を言おうとしても、声が出ない。

情けない鳴き声だけ。



『嘘…付き……っ!』



──────最低だ、私は。




「っ!……ひかっ!」



このままここにいたら自分が何を言うのか怖い。

あんなこと言われても、簡単に好きな気持ちは消えない。



ひたすら走って走って、いつの間にか学校を出て繁華街に出た。



とぼとぼと何処へ行くでもなく、歩き続ける。

泣きながら歩く私を周りは奇妙なものを見るように、避けて歩く。



そんなことはどうでもよくて、私の頭の中は仁くんのことしかない。



なんで男の格好してるの?

何か事情があるの?



違う。今はそんなことを聞きたいんじゃない。



…………なんでもっと早く言ってくれなかったの?



言ってくれてたら仁くんのこと好きにならなかった?



─────そんなことない。きっと好きになってた。



騙してたの?



─────仁くんが優しいのは知ってるじゃん。



私が勝手に好きになったのに、仁くんを責めるの?







゛仁のこと否定しないで〝



ごめん姫。

約束守れなかった。



彼……彼女を傷つけた。




『ふぅ……ひくっ……』



そのまま家についてベッドに倒れこむ。

仁くんのことばかりが浮かんで、ポロポロと涙が止まらない。



携帯がなっているが、誰とも話したくない。

画面を見ると梓君。

何も言わずに帰ってきたからだ。

電話では泣いているのがばれちゃうから、メールで家に帰ってきたから心配しなくていいと送った。



それからも涙は止まらなくて、仁くんへの罪悪感と、失恋の胸の痛みが続いた。




この日は泣き疲れて、寝てしまった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る