第3章
絆創膏
第116話
《仁side》
何か黒い影が俺を追いかけてくる。
必死になって、足がもつれながらも懸命に走った。
それでも影は俺の足を掬う。
それに転んで、影が俺を引っ張る。
抵抗しても影は俺を覆い被さろうとしてくる。
『助けて……嫌だ……』
もう駄目だって諦めた時、暗闇の中目を開けると龍ちゃんがいた。
俺に駆け寄った龍ちゃんは俺の頭を撫でてくれて、それが嬉しくてすごく安心したんだ。
不安そうに俺の名前を呼ぶ龍ちゃんにも安心してほしくて、自然に笑うことができたと思う。
龍ちゃんの温もりがもっと欲しくてすり寄る。
そのまま目を閉じるとふわふわと心地よくなった。
『ふぁぁぁぁ~……んーーー。』
けたたましいアラームの音で目が覚めた。
よく覚えてないが、すごく幸せな夢を見た気がする。
……ん?お酒の苦い味がする。
昔、水と間違えてコップに入ってた焼酎を飲んでしまったから、味はぼんやりと覚えてる。
何故?俺酒なんか飲んでないのに。
そういえば、間違えて焼酎を飲んだあと、その場にいた全員から大きくなっても外で酒は飲むなってげっそりとした顔でお願いされたっけな。
まあいいや、と思って準備を済ませる。
鏡を見ながら髪を整えていると、シャツから鎖骨の辺りにある赤い蚊に刺されの後を見つける。
蚊の季節にはまだ早いし、痒くもない。薬どこだろ?
兄貴に聞いてみよう。
支度を終えて、鞄を持って下に降りる。
「おはよう、仁。」
今日も素晴らしいにこやかな笑顔の兄貴。
『……はよ。』
カウンターに座ると、ご飯を出してくれる。
いただきます、とパクパクとサンドイッチを頬張る。
「はい、コーヒー。」
『ん……兄貴、薬。』
鎖骨の蚊に刺されを指差しながら、薬を下さいと両手でお皿を作る。
「………えっ…ああ、蚊に刺されのね。ちょっと待ってて。」
部屋の気温が下がった気がするが、気のせい気のせい。
はい、と薬をくれた兄貴に礼を言う。
薬を塗っていると、カウンターの向こうから兄貴が出てきて、その手には絆創膏が2枚。
『ん?』
蚊に刺されに絆創膏はいらないよ?
「仁、首のところにも蚊に刺されある。兄ちゃんが薬塗ってやるから貸して?」
『絆創膏?』
素直に薬を渡すと、気がつかなかった首のところに薬を塗られる。
「ん?……いいからいいから。はいっ!終わり!」
『……りがと……俺、酒飲んでない。』
「ああ、飲んでないな。何で?」
不思議そうな顔をする兄貴。
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