第88話



『すごく美味しいです!』



「ふふっ、ありがと~」



嬉しそうに笑う恭さんの笑顔を見ると、やはり兄妹だと思う。

笑った顔がそっくりだ。

仁は元々あまり笑わないが、最近は微笑むことが増えた。

それがすごく嬉しい。



ゆっくりとお粥を食べる仁を見る。



…………弱ってる。



昨日はいつも通りだったのに、どうしたんだろう。



4分の1ほど食べると、れんげを置いてしまった。


『もういいの?』



「……ん」



「うん、少し食べれたね。」



どうやら朝と昼は吐いてしまって何も食べれなかったらしい。

こんなに具合が悪いのは久しぶりに見た。



「姫ちゃんが仁にゼリーとアイス、買ってきてくれたんだって。食べられる?」



「……アイス」



アイスは仁の大好きなヨーグルトアイス。



「はい。」



冷蔵庫からアイスを出してきてくれた恭さんは、他のお客さんの注文を取りに行った。



「…………ありがと。」



『どういたしまして。』



私もカレーを食べ終わり、仁はアイスを3分の1食べていた。



それからは、仁の部屋に移動した。



『仁……何かあったの?』



気になっていたことを聞いてみる。

こんなに弱っている仁を見たのは中学の頃以来だ。



俯いたまま、ボソボソと言っているのを耳を済まして聞き取る。



「……あいつの夢……見た。……最近は見てなかったのに。」



今だ仁を縛り付けている過去。

あの時のことを思い出すと、酷く後悔の念が増す。

私がもっと気を付けてたら、恭さんたちに相談していたら、と。

思い出すだけで怒りが沸き上がる。



仁の言うあいつに対して、そして私に対しても。



『仁っ!』



ぎゅっと仁を抱き締めた。



『仁……もう大丈夫だよ。』



「……ん」



少しの間仁を抱き締めながら、頭をポンポンと撫でる。



「ん……ありがと」



少し笑って見せようとする仁に胸が締め付けられた。



仁は強い。

私に心配かけないようにしてくれている。



『仁、なんかあったら言ってね。』



「……ん」



それからは、今日のことを話した。



赴任してきた先生のこと、委員会会議のこと、雅先輩と飛鳥先輩のことなどなど。

少しでも仁の気が晴れるように、たくさん話した。



そのまま、仁の家に泊まることにした。

隣にいてほしいとお願いされた。

甘えた仁が可愛すぎて、きゅんきゅんした。



…………レアだ。



この日は、仁を抱き締めながら眠りについた。







《姫side end》




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