第81話



『はぁ……はぁ……はぁ……うっ』



息ができない。酷い吐き気がする。



ピピピッ ピピピッ ピピピッ ピピ……ガチャンッ



朝から嫌な夢を見た。

最近は見ていなかった夢を。



起き上がろうとしたが、そのまま倒れてしまった。

勢い良くベッドから転げ落ちて、大きな音がなる。



お尻が痛い。息が吸えない。

動く気にもなれずに床に腰を下ろしていた。

息が苦しくて、落ち着かせようとしても尚更焦って悪化してしまう。



コン コン ガチャッ



「仁おはよう?大丈夫?開けるよ?…………すごい音したけ……どって!大丈夫!?どうした!?」



兄貴は慌てて俺に駆け寄ると、横抱きにしてベットに座らしてくれた。

そして、そのまま膝を曲げて俺に目線を合わせる。



「顔真っ青。」



『ん……はぁはぁ……っ……はぁ……はぁ』



「苦しい?大丈夫か?仁、ゆっくり息吸って……ゆっくり吐いて」



『はぁ……すぅ……はぁ………すぅ……はぁ………』



震えが止まらない。

自分で抑えようとしても、震えは余計大きくなるばかり。

そんな俺を兄貴は抱き締めてくれた。

ぎゅっと腕の力を強め、ポンポンと背中をタップしてくれる。

兄貴のポンポンは、安心させてくれる。



10分くらいして、ようやく落ち着いてきた。



『ん…………ありがと。』



身体を少し離し、俺のおでこに自分のおでこをくっつけた。



「熱はないな。どうしたんだ?」



眉を寄せ、心配している兄貴に申し訳なくなった。

素直に言うことにした。

さらに心配させてしまうことになる。

それでも、不安が溢れてきて、ボソボソと思ったよりもか細い声が出る。




『…………あいつの……夢……見た……ふぅっ』



昔のことなのに。だいぶ経ったのに。

思い出すと怖くて。

きっと久しぶりだったから。

最近見ることなくて安心していたせいだ。



俺の声をしっかりと聞き取った兄貴は、もう一度ぎゅっと抱き締めてくれた。

兄貴のシャツを握り、必死にしがみついた。



「大丈夫。大丈夫だよ。……もうあいつはいないんだから。」



『……ん。』



兄貴の言葉がすっと俺の中に溶け込む。

安心させてくれる。



大丈夫、大丈夫。

もうあいつはいない。



心の中で言い聞かせても、心臓が軋むような音が耳の奥で響く。



「学校休む?」



『……んー。』



「無理しなくて良いんだよ?」



心配して泣きそうな顔になっている兄貴に首を横に振って見せる。



「……分かった。風呂入っておいで。」



『……ん。』



だるい身体を引きずって脱衣場に向かい、汗でベタベタになったシャツを脱ぎ捨てた。

シャワーを浴びることで、気持ちを落ち着かれる。

少しして気持ちを切り替えることが出来た。



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