第79話
「仁!おかえり。」
『ん』
ひょっこりとキッチンから顔を出した兄貴。
さっき店を閉めたのかな。
「先にお風呂入っちゃってくれる?今温めてるから。」
『ん?』
「今日はカレーだよ。」
毎度ながら、よく『ん』しか言わないのに言いたいことが分かるのか謎だ。
カレーは兄貴の好物だ。
ちなみに俺の好物はオムライスとおろしハンバーグ。
悪友たちに子供みたいだとからかわれるが、
いやいや、兄貴の作るものは絶品なのだ。
良いお婿さんになるよ。
ん?主夫って言うんだっけ。
顔良し、性格良し、家事も完璧な高物件の兄貴は彼女がいないらしい。
龍ちゃんが言っていた。
兄や龍ちゃん、虎くんの恋愛事情はよく分からない。
聞く気もないし、話す気もないだろう。
だって、寂しくなるじゃん。
「ん?仁なんかあったの?」
『……。』
俺は無言のまま脱衣場に向かい、風呂に入ると冷たいシャワーを頭から被る。
なんとなく、姫は無意識に灰原に引かれているように感じる。
それは、喜ばしいことだ。
姫に大切な人が出来る。
もしも兄貴に彼女が出来たら?
今までも彼女くらいいたことあるだろう。
それでも、結婚したりしたら。
もう、兄貴と暮らせなくなる。
身体は成長しても心がまだまだ子供の俺には、たった一人の家族と離れるのはつらい。
大好きな兄貴には、幸せになってほしい。
────兄貴と離れたくない。
駄目だ。どんどんネガティブになってきた。
もう考えるのはやめよう。
別に今すぐなんじゃない。
その時になれば、自然に離れるんだ。
今考えたって、どうしようもない。
風呂から出て、下に降りる。
「……仁。なにか悩みでもあるの?」
『……。』
カウンターに座った俺の目の前にカレーとサラダとコーンポタージュが置かれる。
美味しそうな匂いにぐぅ~とお腹がなってしまった。
「ふふふっ。召し上がれ~」
兄貴が隣に座ったのを見て
『……いただきます。』
うん、兄貴の料理は今日も最高だ。
「美味しい?」
『ん』
黙々と食べていると
「兄ちゃんには言いづらい?」
『……。』
ああ、困った顔をさせてしまった。
言いづらいよ。
だって兄貴のことだもん。
兄貴が結婚したら……とか考えちゃったんだもん。
それを本人に言えと?
無理です無理。
そんなこと言ったら、結婚しないとか言いそうだし。
第一恥ずかしい。
『……何も』
「俺に言えなくても、悩んでることあったら姫ちゃんとか真守とか……仁の周りにはたくさんいるだろう?……一人じゃないんだからな。」
『……ん』
そう言うとポンポンと頭を撫でてくれた。
『……うまい』
「ふふふっ。良かったっ!」
兄貴と笑い会える、この幸せな時間をこれからも大切にしようと思った。
その夜、夢を見た───…。
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