第69話



「ねえ仁……風紀委員行くの?」



その日の帰り道、姫は困ったような声を出す。

迷うこともなく首を振って否定の意を伝えたが、姫はまだ困ったように眉を寄せている。



「そう……生徒会本当に入るの?」



『姫』



姫が入りたいなら、入れば良い。

それでも生徒会に入るのは嫌だ。

仕事が多い。

帰って兄貴の手伝いしないといけない。



「私も、入る気はないかな。」



俺のことを気にしてるのか?

姫に居たいと思える場所が出来たならそれでも良いのに。



「ああ!別に仁が入らないからとかじゃなくて、実際仕事多いから放課後に仁と遊べないのがね……甘いもの食べたいしっ!JKライフを堪能しなきゃよねっ!!」



『ふっ』



おどけて言う姫についつい笑ってしまう。

つられて姫も笑っている。



こんな風に姫と笑い合っていられたら、それは俺にとって凄く幸せなことだ。



「それじゃあ仁。頑張ってね!」



『ん』



手を振って姫を見送る。

もしかしたら姫と別行動するのは、入学してから初めてかもしれない。



実は今日の放課後は、姫と別の場所で仕事。

なんでも、会長は別の学校との会議、黒木はその補佐、南雲は体育祭の準備、副会長は別の仕事。

姫は南雲の補佐を、俺は副会長の補佐をすることになっている。



「……。」



『……。』



「……。」



『……。』



「……資料整理。」



そう言うとテーブルに乗っている紙の山を指差した。



『……ん』



なんとも異様な空間に感じた。

二人とも喋らないから、静かだ。

それでも、少ない言葉で通じ会うのは楽だった。

お互い黙々と仕事をしていく。

一時間半程経って、片付け終わった時。



「……ん」



目の前にマグカップが現れた。

このマグカップは各自家から持ち寄ったもので、洗ってそのまま棚にしまって置いてある。

生徒会には日本茶にほうじ茶、紅茶にコーヒーまで色々と揃っている。

副会長が淹れてくれたのは、匂いからしてコーヒーだろう。



『………ありがとう、ございます。』



受けとると、副会長もコーヒーを持って目の前に座った。

ソファーに腰掛けながら、無言でコーヒーを飲む。



今なら聞きたいことを聞けるかもしれない。

二人の時なんて、これが最後だろう。

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