第70話
『副会長』
「……。」
副会長は、俺に視線を向けるだけ。
これは、話を聞いてくれるってことだろう。
『俺が女って……』
「……何で分かったか?」
俺の疑問が分かったらしい。
「……雰囲気……と喉仏。」
『……。』
声も低く女にしては喉仏があるから、そもそも注意深く観察していないと気づかれてこなかった所だった。
先入観とは強いもので、おまけに制服がズボンでネクタイだから「女かもしれない」と思って俺を観察する人物なんていないと思っていた。
それからは何も話さなくなってしまった。
目の前にいるのに、心ここに在らず。
コーヒーを飲み終わり、次は副会長が先程まで作っていた手紙の印刷と製本作業を行った。
「……お疲れ」
『……お疲れ様です』
このまま今日は解散になり、しかも一緒に帰ることになった。
もちろん道中これと言った会話もない。
「……誰にも言わない。」
俺が女ってことだろう。
『……別に、気にしない。』
「嫌、なんじゃないの……?」
『……気になっただけだから。』
別に言われても構わない。
他の人から何を言われても、俺には姫がいる。
それに、俺が男でも女でも誰も気にしないだろう。
でも、俺のことを考えてそう言ってくれたのなら、素直に嬉しいと思う。
「……じゃあ」
『……さようなら』
俺に手を振った副会長は、交差点を渡り丁度来たバスに乗って行った。
とぼとぼと暗くなった歩き慣れた道を進む。
副会長は、兄である会長にも言わないのだろうか?
あの会長なら、知っていそうだ。
実は、男装していても、学校側にはちゃんと女子として入学していることになっている。
理事長が叔父さんの時点で資料を見れば分かるだろう。
おまけにここの個人情報保護管理のセキュリティは高い。
そもそもこの学校は、女子がズボンでも大丈夫な学校だ。
名前順は男女混合。
ちなみに着替えは幽霊が出ると噂されている教室から離れたトイレで済ましている。
理由は、静かでほとんど誰も使っていないようだからだ。
そんなこんなで、上手く学校生活を送れている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます