第57話
《龍side》
今日は虎と恭の所に飲みに行く。
飲みに行くって言ったら、あそこなんだよな。
──────
───
─
トイレに行って帰ってくると、虎がいなくなっていた。
『虎は?』
「仁のとこ」
『あっそ』
あの二人仲良いしな。
うん……。
気になってしまうのは仕方ない。
虎は仁のことが好きだ。異性として。
言われたことはないが、確信している。
双子の勘ってやつかな?
『どこ?』
「裏」
席をたつと、裏に向かう。
ドアについている小さいガラス窓から、中が見えてしまった。
───虎が仁のおでこにキスをしていた。
『っっ……!』
どういうことだ?
虎の背中に仁も手を添えている。
黒い黒い感情がぶわっと溢れ出てきて、止まることがない。
この感情の正体は、
─────嫉妬心。
仁が他のやつと話すことのも、目を合わせることにも、ドロドロと黒い感情が出る。
─────仁のことが好きだ。
これは多分、初めて会った時から。
付き合ってるわけでもない、それでも好きな人に対して嫉妬というものは出てしまうのが当たり前のことだろう。
一度出たこの黒い黒い俺の醜い感情は、どんどん溢れ出て止まることを知らない。
普通に開けても音のしない扉。
物音をたてることなく中に入ったため、二人は俺に気付かない。
虎の手が仁の後頭部に向かい、すぐにキスする気なのが分かった。
「仁……俺……」
『おい』
自分で思っていたよりも、声が低い。
『おい、表出ろ。』
虎を裏口から引きずり出し、ドアを閉め、仁を見る。
彼女はドアを見つめていて、その顔は困惑している。
『仁』
────俺を見てくれ。
我慢できなかった。
抱き締めた仁の身体は、女子にしては背が高いが、細身だ。
抱き締めて分かったのは、見た目よりも仁が華奢なのだということ。
すっぽりと埋まってしまった。
「龍ちゃん」
俺のことをちゃん付けで呼ぶのは仁だけ。
普段はぶっきらぼうなその声は、困ったような声で。
『仁……仁……』
───愛しい。俺を見てほしい。
彼女の頭からは微かに石鹸の匂いがする。
ドキドキする。
さっきの虎とのことを思い出す。
なんで仁は抵抗してないんだよ。
いつも、嫌なら嫌って言うだろ。
つまりそれは、嫌がっていないということだろう。
………仁は虎が好き?
苦しい。苦しい。
それでも、黙って見ていることなんかできない。
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