第56話
虎くんが何かを言おうとして、声に低く唸るような声が被さる。
空気がピリッとしたものに変わる。
思わず肩がビクッとしてしまうほど、地を這うように低い声。
その声は不機嫌をそのまま出している。
「虎。表出ろ。」
虎くんによって俺からは見えないが、その声は
─────龍ちゃんだ。
龍ちゃんは、俺から虎くんを引き剥がすとそのまま裏口の方向へと引きずるように連れていく。
そのまま虎くんを外に投げるように出すと、
「そこにいろ」
有無を言わさぬ威圧的なオーラを出し、ドアを閉めた。
閉まる直前、ドアの向こうに見えた虎くんは、切なそうに此方を見つめていた。
今だ固まったままだった俺は、そのドアを見つめたまま。
龍ちゃんがどんどん近付いてくるのが分かる。
怒ってる。
なんで?俺なんかした?
こんなに怒った龍ちゃんは、久しぶり過ぎて。
怖すぎて、顔が上げられなかった。
「仁」
その声はさっきとは正反対に、とても優しい。
────安心する大好きな声。
少し肩の力が抜ける。
次の瞬間には、今度は龍ちゃんの腕の中。
……今日はなんなんだ。
二人して酒飲みすぎなんだよ。
『龍ちゃん』
「仁……仁」
龍ちゃんはすぐに俺を離すと、頭を撫でてくれた。
そして、何も言わずに裏口から出ていった。
何故龍ちゃんがあんなに怒っていたのか。
何故不安な声で俺を呼んだのか。
聞くことは出来なかったし、考えても分かることじゃない。
「仁」
『兄貴』
兄貴は少し困った顔をして苦笑いをしていた。
きっと今、俺の顔は相当酷いのだろう。
────ねえ、龍ちゃんと虎くんどうしたの?
そう聞きたかった。
「お疲れ様。今日はもう上がっていいよ。」
『兄貴』
「俺からは言えないかな。気になるなら二人に聞くといいよ。」
案の定、兄貴は俺の聞きたいことが分かったようだ。
でも、教えてはくれなかったけど。
『ん』
もう、今日は疲れた。
大人しく兄貴に従うことにした。
「おやすみ」
『ん』
2階に上がり、軽くシャワーを浴びる。
お湯を水に替えて頭から浴びた。
少しスッキリして、さすがにこのまま寝たら風邪を引くから、髪を乾かしてベッドに潜り込む。
濃い1日だった。
1日で色んなことがありすぎると、その日が長かったように感じる。
自然と瞼が降りてくる。
それに逆らわずに、俺は夢の中に落ちていく───…
《仁side end》
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