プロローグ1
《仁side》
真っ暗な部屋。カーテンから漏れる光によってベッドに丸まる膨らみを照らす。
携帯がチカチカと点滅して、着信があったことを伝えている。
ゲッコォ ゲッコォ ゲロゲ~……ピッ!
大音量のカエルの鳴き声に、毛布から真っ白な腕が伸びて、サイドテーブルの携帯を掴んだ。
『ふぁぁぁぁ……。』
おはようございます。
俺の名前は白石仁、ぴっちぴちの15歳です。
今日は北高校に入学式です。
カエルの着信音が鳴っていたスマホを耳に当てる。
可愛いお気に入りの着信音。
『……ん?』
「ん?じゃないわよ!早く起きなさいよ!何回電話したと思ってるの?遅刻よ!ち・こ・くー!!!どうせ遅くまでパソコンいじってたんでしょー!今から行くから後10分で支度して出てきてよ!ちょっとーー!!!聞いてるの?返事しろーー!!!」
『……。』
耳がキーンってする。
「10分よ!二度寝なんかしたらぶっ飛ばすわよ!!!」
ブチッと電話を切られ、切れた電話の画面を見つめる。
履歴は、親友の名前で埋め尽くされていた。
『ふぁぁぁぁ~……。』
何故あんなに朝から元気なのか……。
返事をする隙間のないマシンガントークには慣れているが、流石に朝からはきつい。
親友の指定したタイムリミットまで、後9分。
後が怖いからそろそろ準備しよう。
新しい制服に袖を通し、パーカーとブレザー、鞄を持って洗面所に向かう。
顔を洗い、歯を磨く。
黒髪短髪のウィッグを着け、ワックスでサイドに流す。
両目に黒のカラコンを着けて準備完了。
階段を降りて、下のお店に行く。
「おはよう。」
『……はよ。』
朝から笑顔が眩しいのは俺の兄貴の恭弥。
茶髪を後ろで一つに結わいて、甘い顔立ちと色気が出まくっている満点のルックス。
出血大サービスですか?という程に笑顔を振り撒かれる。
家の一階で昼はカフェ、夜はバーのマスターをやっていて、店には兄貴の悪友と兄貴目当ての女の人、近所の常連さんが多い。
兄貴はイケメンだからね。
好意を寄せてる御姉様方がたくさんいる。
顔も良い、性格も優しくて物腰も柔らかくて、笑顔もパーフェクト。自慢の兄貴だ。
「珈琲いる?」
『ん。』
「ちょっと待ってて。」
兄貴の前のカウンターに座って、珈琲を淹れてくれている姿を見る。
今は営業時間内で、店内は“五月蝿いほど”賑わっている。
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