第68話

私を視界に入れた彼は顔を歪ませる。



―――…そんな顔、しないで。



あなたの傷ついた顔を見たくて、こんな所に来たわけじゃない。



私は壁にもたれている彼の隣に腰をかけて、彼を見上げる。






伏し目がちの彼の目を見たくて、頬に手を添えて彼の顔を持ち上げた時、驚いた顔をしている砦を見て少しだけ可笑しかった。



ジッと彼を、見つめる。





「聞いて、砦。」



「………。」



無言の彼に何を言っていいか、イマイチ分からないけど――…何も言わないということは喋ってもいいということだ。




「さっきの砦………砦じゃないみたいだった。」



「………。」



「怖くて、思わず足が竦んじゃったよ。」



「………。」

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